シリケンイモリを飼育していると、「ヒーターは必要なの?」と迷うことがありますよね。
特に冬場の気温が下がる時期は、ヒーターを設置すべきか、それとも自然な室温で飼えるのか…悩む飼育者も多いでしょう。
実は、シリケンイモリは条件が整えばヒーターなしでも飼育可能な両生類です。
ただし、全ての環境でそれが成り立つわけではありません。
この記事では、ヒーターなしで飼うための条件や注意点、そしてヒーターが必要になるケースについて、わかりやすく解説していきます。
なおシリケンイモリの飼育にヒーターが必要かどうかだけでなく、冬眠についてや冬全般の飼育対策については、シリケンイモリの飼育の冬対策!冬眠させるかどうかの記事を参照してください。

シリケンイモリはヒーターなしでも飼えるの?

シリケンイモリは、もともと沖縄や奄美などの温暖な地域に生息する日本固有のイモリです。
そのため、本来の生息地に近い環境であれば、ヒーターを使わずに飼育することも十分可能です。
ただし、日本国内でも本州以北などの寒冷地では、冬になると室温や水温が大きく下がるため、ヒーターなしでは体調を崩すリスクが高くなります。
要するに、住んでいる地域や室内環境に応じて、ヒーターの有無を検討すべきということですね。
このあとの項目では、より具体的に「シリケンイモリが快適に過ごせる温度」や「野生での生活環境」について解説していきます。
シリケンイモリの適温とは?

シリケンイモリが快適に過ごせる水温はおおむね18~25℃程度とされています。
少し寒さにも強く、15℃くらいまでは耐えることができますが、それ以下になると動きが鈍くなり、体調を崩すリスクが出てきます。
逆に、28℃を超えるような高温も苦手で、夏場の過剰な暑さも注意が必要です。
このように、ヒーターなしでも飼えるかどうかは、室温が常にこの範囲に収まるかどうかで判断することになります。
シリケンイモリの冬場の飼育でも暖房が効いていて、室温が極端に下がらない家庭であれば、ヒーターなしでも十分に飼育できる可能性があります。
野生ではどんな環境に住んでいるのか

シリケンイモリは、沖縄本島や奄美大島など南西諸島の湿地や水辺に生息しています。
水田や小川、森林内の湧き水など、年間を通じて比較的気温が高く、冬でも極端に冷え込まない場所が主なすみかです。
特に沖縄本島では、冬でも気温が10℃以下になることは少なく、水温も安定しているため、自然環境下ではヒーターのような保温が必要ないわけです。
また、こうした場所では、水中と陸地を行き来しながら生活しており、落ち葉の下や岩のすき間など、自然の隠れ場所で寒さをしのいでいることもあります。
このような背景から、本州以北のような寒冷地では、野生環境と大きく異なるため、ヒーターの使用が視野に入ってくるわけです。
本州や寒冷地での飼育は難しい?
結論から言うと、本州以北などの寒冷地でシリケンイモリをヒーターなしで飼育するのは、かなりハードルが高いです。
なぜなら、冬場の室温が10℃以下になることが多く、場合によっては水温が5℃前後にまで下がってしまうからです。
シリケンイモリは低温にもある程度は耐えられますが、15℃を下回ると活動が鈍くなり、エサを食べなくなることもあります。
極端な活動低下を見て「冬眠している」と言われることもありますが厳密に言えば冬眠とは少し異なる現象です。

さらに冷え込みが長期間続くと、免疫力が落ちて病気になったり、最悪の場合は衰弱してしまうことも。
人間のように布団にくるまって寒さをしのげるわけではないので、ヒーターでの保温が必要になる環境がほとんどです。
逆に、九州南部や四国の沿岸部など比較的暖かい地域なら、ぎりぎりヒーターなしでもいけるケースもあります。
ただし、ここでも室温のチェックは必須。ちょっと油断しただけで、イモリにとっては命に関わる寒さになってしまうこともあります。
エサ食いの様子をよく観察して、「あまり食べていないな」と感じたら無理に与えないことも大切です。
ヒーターなしで飼育できるかの判断基準
シリケンイモリは、沖縄や奄美など年間を通じて温暖な地域に自然分布する両生類です。
このため、室温が常に15℃以上を保てる環境であれば、基本的にヒーターなしでも飼育が可能といえます。
ただし、すべての環境にそれが当てはまるわけではないため、以下のポイントで判断してみましょう。
年間を通して暖かい地域かどうか
まず重要なのが、住んでいる地域の気候です。
沖縄・奄美はもちろん、九州南部や四国の沿岸部など、冬でも室温が10℃以下になりにくい地域では、ヒーターなしでも問題ない場合があります。
一方、本州中部以北では冬に室温が10℃を大きく下回る日も多く、ヒーターなしではリスクが高まります。
室温・水温が安定して15℃以上を保てるか
室温が15℃以上を維持できれば、シリケンイモリの活動も比較的安定します。
ただし、夜間や寒波などで急に冷え込むと、水温も一気に低下してストレスや体調不良の原因になることがあります。
「暖房をつけないと部屋が冷えるな…」と感じる家なら、ヒーターを使う選択肢も視野に入れておくべきです。
ヒーターが必要になるのはどんな場合?
以下のようなケースでは、ヒーターの使用を強くおすすめします。
- 室温が長時間15℃を下回る場合
- 寒冷地での飼育(東北・北陸・北海道など)
- 幼体や病後・衰弱した個体の保温が必要な場合
- 突然の寒波・停電による急激な温度低下がある場合
「冬は部屋が10℃くらいになるけど、イモリは冬眠してる感じで大丈夫そう」という声もありますが、シリケンイモリは本来、冬眠しない生き物です。
あまりに寒いと「活動休止」ではなく「命の危険」ですので、過信しないようにしましょう。
ヒーターなしで飼う際の注意点と工夫
ヒーターなしでの飼育は、できるだけ自然に近い環境を再現したい飼育スタイルともいえます。
ただし、油断すると命に関わるリスクもあるため、以下の点には特に注意が必要です。
寒暖差や温度変化によるストレスを防ぐ
日中と夜間で大きく温度差があると、シリケンイモリは強いストレスを感じて体調を崩すことがあります。
特に窓際など外気の影響を受けやすい場所では、水槽内の水温も大きく変化します。
毛布で水槽を包む、底に断熱マットを敷くなどの保温工夫で、温度の急変を防ぐことが大切です。
活動が鈍くなるのは異常じゃない
気温が下がると、イモリの動きが鈍くなることがありますが、これは体の自然な反応です。
「ずっと動かないけど大丈夫?」「底でじっとしてる…」と不安になるかもしれませんが、極端な温度でなければ問題ありません。
ただし、まったく動かない・エサも食べない状態が長く続くようなら、温度を測って保温を検討しましょう。
給餌頻度の調整と水質管理
低温時は代謝が落ちるため、エサを与えすぎると食べ残しが増え、水が汚れてしまいます。
活動量が少ない冬場は、週1~2回程度の給餌でOK。反応が鈍いときは無理に食べさせず、様子を見ましょう。
水槽の保温対策(断熱・毛布など)
ヒーターを使わない場合は、周囲の工夫でできるだけ温度変化を抑えることがカギです。
- 水槽の下に断熱シートを敷く
- 側面をタオルや毛布で覆う(ただし通気を確保)
- 水槽のフタを少し閉じて熱を逃がさないようにする
こうした小さな工夫の積み重ねが、シリケンイモリの命を守るポイントになります。
「やっぱりヒーター必要かも…」と思った方へ
ここまで読んで、「やっぱりうちの環境じゃヒーターなしは厳しいかも」と感じた方。
それ、大正解です。命を守るために“保温の決断”をするのは、飼育者として立派な判断です。
では、どんなヒーターがシリケンイモリに適しているのでしょうか?
両生類の飼育においては、爬虫類や熱帯魚とは少し違った注意点があります。
パネルヒーター(底面用)

水槽の底や側面(水槽の外側)に貼るタイプ。
水温全体はあまり上がりませんが、局所的に温かい場所を作ることで、イモリが自分で移動して体温調整できるのが魅力です。
熱帯魚用と違い、水全体を高温にしすぎる心配がなく、半水棲のイモリに向いています。
おすすめ
- 特徴:温度自動制御機能付き。温めすぎず、爬虫類・両生類に安心。
- サイズ:13×15cm(目安:20~30cm水槽向け)
- 用途:水槽の外側底面に貼る。パネルタイプで、イモリやヤモリなどにピッタリ
- 価格:約1,800円前後(税込)
- Amazonリンク:ピタリ適温プラス 1号
ミニ水中ヒーター(温度固定型)
水槽内の水温を20〜23℃前後に維持できるように設計されているタイプ。
水が冷えすぎる場合にはこれが有効。小型水槽に対応しているタイプを選びましょう。
底面ヒーターは不向き?

底面ヒーター(という名前で売られているものの多く)は、“水槽の中”の底に設置して、水そのものを加温するタイプです。
主に水温を一定の温度に保つことを目的として使用され、たとえば23℃固定などの設定で、水全体を安定した温度に加温してくれます。
このタイプのヒーターは、熱帯魚や水棲カメのように水温が安定していないと生きられない生き物向けに設計されています。
シリケンイモリに使う事も可能ですが、高温になりすぎないように注意が必要で、20〜23℃あたりの機種を選ぶのが望ましいです。
ガッツリと水温を上げたい場合には非常に効果的なヒーターですが、加温しすぎるとイモリには向かない環境になる可能性があるため、使用する際は慎重に選びましょう。
サーモスタット機能は必要?

高性能な水中ヒーターにはサーモスタット(温度調節機能)付きのものもあります。
ただし、シリケンイモリの場合はそこまで高精度な温度調整は必要ありません。
温度固定型やパネルタイプで十分対応可能です。
注意点:やけどと高温に注意!
イモリは皮膚がとても薄くてデリケート。
直接ヒーターに触れてしまうと、低温やけどを起こすこともあります。
そのため、水中ヒーターは必ずガード付きのものを使うか、ヒーター部分にスポンジを巻いて対策をしておきましょう。
また、設定温度が高すぎるタイプ(26℃以上など)はNG。
イモリにとっては暑すぎます。
ひとことアドバイス
ヒーター選びは「とりあえず安いからコレでいいや」ではなく、
“イモリにとって快適かどうか”で選ぶのが長く元気に飼うコツです。
「備えあれば憂いなし」。
ヒーターがあることで、突然の寒波や旅行中の冷え込みも怖くなくなりますよ。
まとめ|飼育環境に合わせた判断を
シリケンイモリは、日本の中でも比較的暖かい地域に生息するイモリで、条件が整えばヒーターなしでも飼育が可能です。
ただしそれは、室温が年間を通じて15℃以上を保てる環境に限った話ですから日本国内でもほとんどの地域が対象外となるでしょう。
寒冷地や冬場の冷え込みが厳しい場所では、ヒーターの使用がイモリの健康を守るために必要になります。
「自然に近い飼育をしたい」という思いはとても素敵ですが、イモリの命に関わるリスクがある場合は、ためらわずに保温を導入すべきです。
飼育者の判断と工夫次第で、ヒーターなしでも快適な飼育環境は作れますが、それには日々の観察と温度管理の意識が欠かせません。
無加温で飼うかどうか迷ったときは、“今の環境がシリケンイモリにとって自然なのか?”と考えてみると、答えが見えてくるかもしれませんね。
シリケンイモリの飼育方法の総合記事はこちらです。是非ご参照ください。