シリケンイモリは、ユニークな見た目と比較的飼いやすい特性から、爬虫類・両生類の飼育初心者にも人気のある生き物です。
自然界では主に水辺に生息し、陸上と水中の両方を行き来しながら生活しています。
そのため、飼育する際には彼らが快適に過ごせる環境をしっかりと整えることが重要です。
飼育ケースの選び方やレイアウト、水質管理などを適切に行わなければ、健康を損ねる原因となることもあります。
また、餌の種類や与え方にも注意が必要で、適切な給餌を行うことでシリケンイモリの成長を促し、健康を維持することができます。
さらに、繁殖や脱走防止、病気の予防といったポイントを押さえることで、長く快適に飼育を楽しむことができるでしょう。
この記事では、シリケンイモリを飼育する際に必要な知識やコツを詳しく紹介し、初めての飼育でも安心して取り組めるように解説していきます。
シリケンイモリとは?

「シリケンイモリ(尻剣井守)」の名前は、その特徴的な体の形状に由来しています。
「シリケン」は、尾(尻)が剣のように細長く尖っていることを指し、「イモリ(井守)」は古くからの和名で、水辺に生息する両生類を指します。
このことから、シリケンイモリは「尻尾が剣のような形をしたイモリ」として名付けられたと考えられています。
また、シリケンイモリは日本の南西諸島(沖縄や奄美地方)に生息するため、地域ごとに微妙な形態の違いがあり、オキナワシリケンイモリやアマミシリケンイモリといった亜種が存在し、2種には生体の特徴が大きく異なります。


シリケンイモリの飼育レイアウト

飼育ケースと水槽の選び方
シリケンイモリは水陸両生のため、陸地と水場を両方確保できる水槽を選ぶことが重要です。
陸地と水場の両方確保が必要なので、個体のサイズに比べるとやや広い広さが必要になり、サイズは最低でも幅60cm以上のものが推奨されます。
広めの水槽を選ぶことで、より自然に近い動きを再現でき、ストレス軽減にも繋がります。
また、通気性が確保されたケースを選び、湿度調整ができる設計が理想的です。
陸地と水中のスペースの分け方
シリケンイモリは水と陸の両方で生活するため、適切なスペースの確保が重要です。
水槽の約30〜40%を陸地にし、残りを水場にするのがバランスの良いレイアウトですが、個体によってはより水場を好む場合もあります。
陸地には滑らかな石や流木を配置し、登りやすいように工夫すると良いでしょう。
また、湿度を保つために水苔やウールマットを敷くと、イモリの体が乾燥するのを防ぐことができます。
水場の水深は、イモリが水中で自由に泳げる程度(5〜15cm程度)が理想的です。
適度な隠れ家を設置することで、ストレスを軽減し、安心できる環境を作りましょう。
水場
シリケンイモリは半水棲の生き物で、水場は必須です。
水深は5〜10cm程度が理想で、泳ぎやすく、なおかつ呼吸のために簡単に水面に上がれる深さが安心です。
フィルターを使用すれば水質管理がしやすくなりますが、流れが強すぎるとストレスになるため、弱めのものかスポンジフィルターがおすすめです。
水温は18〜24℃を保ちましょう。
また、水質悪化を防ぐために週1回の水換えも重要です。
陸場
陸場はシリケンイモリが休んだり日光浴の代わりに日を浴びたりするために必要です。
高さがありすぎると登りづらいため、水面から滑らかに繋がる位置に配置します。
発泡スチロールに石を貼る、コルクバークを浮かせるなど、人工的な素材でも安定していれば問題ありません。
湿度を保つために水を含む苔を敷いたり、湿った土を使うことで、快適な休憩スペースになります。
水陸移動用の橋渡し
水と陸を安全に行き来できるように、緩やかな傾斜のスロープや橋を設けます。
コルクやウレタン製の岩、段差付きのレイアウト素材が使いやすく、足を滑らせないよう表面に凹凸のある素材が理想です。
急な段差や垂直な壁は避けましょう。
移動がスムーズにできることで、イモリのストレスが減り、活発に行動するようになります。
素材が水に強く、かつ腐りにくいものを選ぶことがポイントです。
床材
水中の床材
水中にはソイルや砂利、水陸両用の人工芝などが使われますが、シンプルなベアタンクでも掃除がしやすい利点があります。
陸地の床材
陸地には湿らせたヤシガラ土や腐葉土、苔などが適しており、湿度を保つ役割を果たします。
シリケンイモリは床を掘ることもあるため、柔らかめの素材が好ましいです。誤飲を避けるため、水中部分の床材は粒が細かすぎないものを選ぶようにしましょう。
隠れ家
イモリは臆病な性格のため、隠れられるスペースを複数用意してあげることが大切です。
流木の下、植木鉢の割れた部分、ココナッツシェル、土管などが使いやすいです。
明かりが当たりにくく、湿度が保たれる空間が最適で、特に陸地と水中の両方に隠れ家があるとイモリにとって安心です。
縄張りを意識する場合もあるため、複数飼育時は個体数+1以上の隠れ場所を作るとトラブル防止になります。
観葉植物
レイアウトを自然に見せ、湿度維持にも貢献する観葉植物は、シリケンイモリ飼育に向いています。
アヌビアス、ミクロソリウム、マリモ、スパティフィラムなどが相性良く、陸地にはポトスやアイビーを配置するのもおすすめです。
農薬が使われていないものを選び、植え込み部分には根腐れ防止に赤玉土や水苔を使うと管理しやすくなります。
根が水に浸かっても腐りにくい植物が最適です。
流木や木の枝
流木や木の枝は自然な景観を演出するだけでなく、隠れ場所や日陰を作る役割があります。
水中ではイモリがその下に潜ったり、上に乗って休んだりします。
あらかじめアク抜きをしっかり行い、水に沈むタイプを選ぶことで安定性が増します。
また、水カビが生えにくい素材を選ぶと手入れが楽になります。陸地側では枝を橋渡しに使ったり、登り木としての活用も可能です。
ヒーター
冬場の水温が15℃を下回る地域では、水中ヒーターの使用が必要になります。
シリケンイモリの適温は18〜24℃のため、オートサーモ付きのヒーターを使うと安全です。
ガラス水槽では設置しやすく、底面ヒーターやヒーターガードも併用すると火傷の心配が減ります。
ヒーターによって水が温まりすぎないよう、定期的に水温計でチェックすることが大切です。
照明
シリケンイモリ自体は強い光を好みませんが、観葉植物や水質管理のために照明は役立ちます。
LEDライトが省エネかつ長寿命でおすすめです。
照明は1日8時間程度が目安で、昼夜のリズムを作ってあげると、イモリの活動も安定します。
ただし、直射日光のように強い照明は避け、照度を調整できるライトがあると便利です。隠れ家や日陰を設けておくと、イモリが光を避けることもできます。
シリケンイモリの飼育方法
水質管理と必要な道具
シリケンイモリの健康を維持するためには、清潔な水環境が不可欠です。
フィルターの設置はもちろん、ろ過能力の高いものを選ぶことで水質の安定が図れます。
特にスポンジフィルターや外部フィルターは、バクテリアの繁殖を促し、汚れを分解するのに役立ちます。
また、水換えは週1回程度が基本ですが、イモリの数が多い場合は汚れが溜まりやすくなるため、こまめな水換えが必要です。
水道水をそのまま使用すると塩素が含まれているため、必ずカルキ抜きをしてから使用しましょう。
水質管理用の試験紙を使って、pHやアンモニア濃度の変化を定期的にチェックすることもおすすめです。
シリケンイモリに適した水温と冬の管理

適温は18〜24℃で、特に寒い時期にはヒーターを使用して低温になりすぎないように管理します。
冬場は20℃を下回ると活動が鈍るため、保温対策を徹底しましょう。
逆に夏場は水温が上がりすぎると負担がかかるため、涼しい場所に水槽を設置し、場合によっては冷却ファンを使用すると良いでしょう。
また、温度変化に弱いため、急激な水温の変化を避けることが重要です。
水温計を設置し、こまめにチェックすることで、最適な環境を維持できます。
掃除とメンテナンスの方法
シリケンイモリの飼育環境を清潔に保つためには、定期的な掃除とメンテナンスが欠かせません。
水換えは週1回を目安にし、全量を交換するのではなく、3分の1程度を入れ替えると水質の急変を防ぐことができます。
水槽の壁面には苔が付着しやすいため、スポンジや専用のスクレーパーで取り除きましょう。
ろ過フィルターの掃除は月1回程度行い、目詰まりを防ぐことで水質悪化を抑えられます。
また、底砂の汚れも溜まりやすいため、専用の底砂クリーナーを使って定期的に清掃すると、アンモニア濃度の上昇を防ぐことができます。
飼育水の状態を良好に保つことで、イモリが健康に過ごせる環境を維持しましょう。
シリケンイモリの餌の種類

シリケンイモリは肉食性が強く、小さな生き物を好んで食べます。
メダカ、赤虫、イトミミズなどの生餌は特に好まれ、これらを中心に与えるのが理想的です。
人工飼料も使用できますが、初めての個体は慣れるまで食べないことがあるため、徐々に慣らすことが重要です。
また、バランスの取れた食事を心がけるために、ミルワームやエビのすりつぶしなども選択肢として加えると良いでしょう。
人工飼料
シリケンイモリは基本的に動く餌を好みますが、慣れれば人工飼料も食べるようになります。
専用のイモリフードや熱帯魚用の沈下性ペレットを使うと良いでしょう。
最初は水に浸してふやかし、ピンセットで動かすようにして与えると食いつきが良くなります。
食べ慣れると水面に浮かべるだけで食べるようになりますが、個体によっては慣れるまで時間がかかることもあります。
食べ残しが水を汚しやすいので、与える量は少なめにし、食べ切れる量を調整しましょう。
メダカ

シリケンイモリは肉食性が強く、小型の魚も捕食します。
特にメダカはサイズ的にも適しており、動きがあるため捕食本能を刺激します。与える場合は、健康な個体を選び、イモリが捕まえやすい環境にすることが大切です。
ただし、常に水槽に泳がせていると水質悪化の原因になるため、適量を調整する必要があります。
繁殖個体のメダカを使用することで、野生由来の寄生虫のリスクを軽減できます。
金魚

シリケンイモリに金魚を与えることもできますが、注意が必要です。
金魚はイモリよりも体が大きく成長しやすいため、イモリが捕食できるサイズの稚魚を選ぶ必要があります。
また、金魚は粘液を多く分泌し、消化しにくい面があるため、頻繁に与えるのは推奨されません。
さらに、市販の金魚は病原菌や寄生虫を持っている可能性があるため、生餌として使用する場合はしっかりとトリートメント(隔離飼育や薬浴など)を行うことが大切です。
基本的にはイモリの主食としてではなく、たまに与えるごちそう程度にすると良いでしょう。食べ残しがあると水質が悪化しやすいので、管理も重要です。
赤虫
冷凍赤虫はイモリの餌として非常に人気があり、食いつきも抜群です。
解凍してピンセットで動かしながら与えると食べやすくなります。
生きた赤虫を与える場合は、水中に放すとイモリが狩りをする様子を観察できますが、赤虫が水底に沈むと食べ残しが出る可能性があり水を汚しやすいので、与えた後の管理が重要です。
与えすぎると栄養が偏るため、他の餌とバランスを取るようにしましょう。
イトミミズ
イトミミズもシリケンイモリにとって非常に良い餌の一つです。
動きがあるため捕食本能を刺激し、水中での狩りの練習にもなります。生きたものは水底に潜り込んでしまうことがあるので、ピンセットで与えるか、冷凍のものを解凍して与えるのが便利です。
栄養価が高い一方で、偏食を防ぐために他の餌と併用することが推奨されます。
また、過剰に与えると水質が悪化しやすいため、残った分は取り除くようにしましょう。
ミルワーム
ミルワームはタンパク質が豊富ですが、脂肪分も多いため、主食ではなく補助的に与えるのが良いです。硬い外骨格(キチン質)を持っているため、そのままでは消化しにくいことがあります。
与える際はピンセットでつかみ、イモリの口元で動かすと食いつきが良くなります。また、大きすぎる場合は頭を潰したり、小さくちぎって与えると食べやすくなります。栄養バランスを考え、週に1〜2回程度の頻度に留めるのが理想的です。
エビ
小型のエビ(例えばミナミヌマエビ)はシリケンイモリの優れた餌となります。
生きたエビを水槽に入れると、イモリがハンティングを楽しみながら捕食します。
ただし、エビが大きすぎるとイモリが食べられないことがあるので、適度なサイズを選ぶことが重要です。
冷凍エビを使用する場合は、小さく切って与えると良いでしょう。与えすぎると水質が悪化するため、食べ残しは速やかに取り除くことが大切です。
給餌頻度と量の目安
幼体期(若い個体)
シリケンイモリの幼体は成長が早く、頻繁な給餌が必要です。
目安として1日1~2回、少量ずつ与えます。
食べ残しが出ると水質悪化の原因になるため、適量を見極めることが大切です。
主に赤虫、イトミミズ、生餌(ブラインシュリンプや小さなミミズ)などを与え、動く餌に反応しやすい特性を活かします。
人工飼料も慣れさせるために少しずつ試し、消化の良いものを中心に与えます。水温は20~25℃が適温で、低温すぎると食欲が落ちるため注意が必要です。
成体期(成熟した個体)
成長が落ち着いた成体は、代謝が幼体ほど活発ではなくなるため、週に2~3回の給餌が適切です。
1回の量は2~3分で食べ切れる量が目安で、食べ残しを出さないよう調整します。
主食として赤虫、イトミミズ、人工飼料を与えつつ、変化をつけるために小型の魚(メダカなど)やエビを与えるのも良いですが、頻度は抑えめにします。
水温が15℃以下になると食欲が落ちるため、冬場は給餌頻度を減らしても問題ありません。
シニア期(高齢個体)
10年以上生きることもあるシリケンイモリですが、高齢になると消化機能が低下し、食欲も減ることがあります。
この時期は週に1~2回、消化の良い餌を少量与えるのが理想的です。
赤虫や小型の人工飼料が適しており、ミルワームのような硬い餌は消化負担が大きいため控えたほうがよいでしょう。
噛む力が弱くなる個体もいるため、大きな餌は細かくして与えると食べやすくなります。
冬場に食欲が落ちる場合は無理に給餌せず、動きや体調を観察しながら調整すると良いでしょう。
拒食の原因と対策
シリケンイモリが餌を食べない原因として、環境の変化、水質の悪化、ストレス、病気などが考えられます。
特に新しい環境に移した直後は、警戒心から食欲が落ちることがあるため、無理に食べさせようとせずに環境に慣れさせることが大切です。
また、水質が悪化すると食欲不振になることがあるため、こまめな水換えやフィルターの管理を徹底しましょう。
ストレス軽減のためには、隠れ家を用意し、落ち着ける環境を作ることが重要です。
病気の疑いがある場合は、隔離して様子を見ながら適切な対応を検討することが求められます。
シリケンイモリは冬眠しない?
シリケンイモリは、日本の沖縄など温暖な地域に生息しているため、基本的には冬眠する習性はありません。
沖縄地方では冬でも気温が大きく下がることは少なく、水温も一定の範囲内に保たれるため、冬眠の必要がない環境で生活しています。
ただし、飼育下では冬場の室温や水温が15℃以下に下がると活動が鈍くなり、エサをほとんど食べなくなることがあります。
これは冬眠ではなく、単に低温による代謝の低下であり、エサの消化能力も落ちるため無理に給餌する必要はありません。そのため、冬場は水温が極端に下がらないようにするのが理想的です。
沖縄よりも寒い地域で飼育している場合、水温が10℃以下に下がると、動きが鈍くなり、じっとしている時間が長くなります。この場合、意図的に冬眠させることも可能ですが、シリケンイモリは冬眠に適した体のつくりをしていないため、リスクが高いです。
低温環境では免疫力が低下し、病気になりやすくなるため、冬眠させるよりも加温して適温(15〜25℃)を維持するほうが安全です。
- シリケンイモリは冬眠しない(沖縄の暖かい環境ではその必要がない)。
- 低温にさらされると活動が鈍くなるが、冬眠とは異なる。
- 飼育下では冬場に水温を15℃以上に保つのが理想的。
- 10℃以下では動きが鈍くなり、リスクが高まるため注意が必要。
シリケンイモリの繁殖について
繁殖のための適切な環境
水温を少し上げ、陸地に湿った苔や流木を設置すると、産卵しやすくなります。
卵の孵化と幼体の育成
孵化後は稚イモリ用の専用餌を与え、こまめに水質管理を行います。
オスとメスの見分け方
オスは尾が細く、メスは尾が太めであることが特徴です。
シリケンイモリの健康管理
体調不良のサインと病気
シリケンイモリの健康状態を把握することは、長期的な飼育において非常に重要です。
食欲不振、皮膚の異常、動きが鈍い場合は特に注意が必要です。
皮膚が白く濁ったり、赤く炎症を起こしている場合は細菌感染の可能性があり、早急な対応が求められます。
また、呼吸が浅くなったり、異常な浮き沈みを繰り返す場合は内部寄生虫や肺炎の可能性も考えられます。
これらの症状を見つけた際は、できるだけ早く環境を見直し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。
シリケンイモリのストレス要因
シリケンイモリは環境の変化に敏感であり、急激な変化は大きなストレスの原因となります。
例えば、水温の急激な変化、飼育ケースの頻繁な移動、他の生物との同居、過密飼育などがストレスを引き起こします。
ストレスが蓄積すると、免疫力が低下し、病気にかかりやすくなります。
適切な環境を維持するためには、温度管理を徹底し、シェルターや隠れ家を設置して安心できる空間を確保することが重要です。
また、飼育水の清潔さを保つこともストレス軽減に大きく貢献します。
治療と健康維持のポイント
病気になった場合は、すぐに隔離し、水質改善や適切な治療を施しましょう。
隔離することで他の個体への感染リスクを抑えることができます。隔離ケースでは水質を最適な状態に保ち、治療が必要な場合は薬浴を行うのも有効です。
例えば、細菌感染の場合は塩浴やメチレンブルーを使用した治療が推奨されます。
また、定期的に餌の栄養バランスを見直し、カルシウムやビタミンを適切に補給することで、健康を維持しやすくなります。
普段からイモリの行動を観察し、異変があればすぐに対応することが、長く健康的に飼育するためのポイントです。
シリケンイモリの脱走対策

飼育ケースの工夫
シリケンイモリは脱走の名人といわれるほど、驚くほどの運動能力を持っています。
そのため、脱走防止のためには、しっかりした蓋を使用し、隙間を完全に塞ぐことが大切です。
特にケースの角やフィルター周辺のわずかな隙間から逃げ出すことがあるため、テープや専用のシリコンシールでしっかり固定すると安心です。
また、蓋には適度な通気口を設け、蒸れないようにする工夫も必要です。
飼育ケースの高さを十分に確保することで、イモリが壁を登りきれないようにするのも効果的です。
脱走が可能性が高い状況
水位が高すぎると、シリケンイモリは壁をよじ登りやすくなり、脱走のリスクが高まります。そのため、水深は適度に調整し、登れるような構造物が水槽の縁近くに配置されていないか確認しましょう。
また、フィルターや配線などが足場となってしまう場合もあるため、位置を調整するか、ガードを設けるのが良いでしょう。
ケース内の湿度が高すぎると、イモリの皮膚がより粘着性を持ち、壁を登りやすくなるため、換気を適切に行い、湿度をコントロールすることも大切です。
逃げたシリケンイモリの捕獲方法
万が一脱走してしまった場合は、できるだけ早く捕獲することが重要です。
シリケンイモリは乾燥に弱いため、長時間放置すると危険です。まず、乾燥しやすい場所や暗い隙間、家具の下や壁際などを重点的に探しましょう。
湿らせた布やスポンジを設置しておくと、その上に戻ってくる可能性が高まります。
夜行性のため、夜間に動き回ることが多く、暗くして静かに待つことで発見しやすくなります。
捕獲する際は、優しく包み込むように手で掴むか、濡れたガーゼを使ってそっと持ち上げると、安全に戻すことができます。
シリケンイモリとアカハライモリの共通点と違い

シリケンイモリとアカハライモリの飼育方法は、基本的にはよく似ています。
どちらも水陸両生のイモリであり、適切な環境を整えれば飼育しやすい種類です。
ただし、いくつかの違いもあるため、それぞれの特徴に合わせた飼育環境を作る必要があります。
飼育環境
シリケンイモリとアカハライモリの飼育環境はほぼ共通です。
水中と陸地の両方を用意する「セミアクアリウム」スタイルが適しています。
水槽のサイズは30cm以上が理想で個体数が多い場合は広めの環境が望ましい。
全水棲ではなく、陸地に上がることもあるため、流木や石を配置して陸地部分を作ります。
水質はろ過装置を使って水を清潔に保つのが望ましいく強い水流は避ける。
フィルターを使用しない場合は、2~3日に1回程度の水換えが必要。
水道水は塩素を除去して使用する(カルキ抜きをするか、1日汲み置きする)ことが望ましいです。
温度管理
シリケンイモリとアカハライモリの適切な温度管理もほぼ共通です。
水温は15~25℃が適温。
夏場は冷却ファンや水槽用クーラーで温度管理し、冬場はヒーターなしで越冬可能な場合が多い(シリケンイモリは暑さに強く、アカハライモリは寒さに強い傾向)。
餌
シリケンイモリもアカハライモリも赤虫、イトミミズ、人工飼料(冷凍アカムシ、乾燥エサ、人工ペレットなど)を食べますが、シリケンイモリはやや肉食性が強く、エサに動きを求める傾向があるため、生餌のほうが食いつきがよい。
毒性について
シリケンイモリとアカハライモリのどちらも皮膚からテトロドトキシンという毒を分泌するため、触れた後は必ず手を洗うことが重要。傷口や口に触れないよう注意する。
シリケンイモリとアカハライモリの異なる点
シリケンイモリは沖縄に生息するため、アカハライモリよりも若干高い水温に耐えられるが、夏場の高温には注意が必要です。
アカハライモリは陸地にいる時間が長く、シリケンイモリは水中にいる時間が比較的長いため、シリケンイモリは水を多めにしても適応しやすいと言われています。
アカハライモリの成体は10cm前後、シリケンイモリは12~15cm程度に成長するため、サイズに応じた飼育スペースが必要です。
シリケンイモリの豆知識
シリケンイモリが金箔色になるのはなぜ?
シリケンイモリの背中に見られる金箔状の模様は、個体差が大きく、遺伝的要因が主な原因とされています。
特に、沖縄シリケンイモリではこの金箔模様を持つ個体が多く見られます。

一方、奄美大島に生息するアマミシリケンイモリでは、背中の側稜にオレンジの線や斑が入る個体が多いとされています。
飼育下で金箔模様が増えるかどうかについては明確な情報が少ないものの、成長や脱皮を通じて模様が変化する可能性があると考えられています。
このように、シリケンイモリの金箔模様は遺伝的要因が主な原因であり、個体ごとにその出現や程度が異なります。
シリケンイモリは絶滅危惧種?
シリケンイモリは、日本の奄美諸島や沖縄諸島に生息する固有の両生類です。
その保全状況は評価機関や地域によって異なります。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、シリケンイモリは「危急種(VU)」に分類されています。
一方、環境省のレッドリストでは「準絶滅危惧(NT)」とされています。また、沖縄県のレッドリストでも同様に「準絶滅危惧種」に指定されています。
野生個体の採集は違法?
違法かどうかは地域によって異なりますし、また保全状況は時期によって異なるためここでは明示は避けさせていただきご自分で環境庁のホームページなどでお調べください。
いずれにしても、どの地域でも野生個体数は減少傾向にあるため野生個体を採集するよりもペットショップで繁殖個体を購入する方を推奨します。
まとめ
シリケンイモリは比較的飼育しやすい両生類ですが、適切な環境を整えることが重要です。
水質管理や餌の種類、冬場の温度管理などをしっかり行い、健康的に飼育しましょう。特に水質管理では、定期的な水替えやフィルターのメンテナンスを怠らないことが大切です。
餌に関しては、生餌と人工餌をバランスよく与えることで栄養の偏りを防ぎ、健康的な成長を促します。また、冬場の温度管理に注意し、適切な保温対策を施すことで活動の低下を防ぐことができます。
さらに、脱走防止対策を万全にし、安心して飼育を楽しんでください。シリケンイモリは意外にも運動能力が高く、飼育ケースの隙間や配線を伝って脱走することがあります。
そのため、ケースの蓋をしっかり固定し、隙間がないか定期的にチェックすることが重要です。
脱走した際は、乾燥しやすい場所や暗がりを中心に探し、湿らせた布を用いて優しく捕獲すると安全です。
また、シリケンイモリの行動を日々観察し、異常がないかチェックすることも大切です。健康管理を怠らず、適切な環境を維持することで、長く元気な姿を楽しむことができるでしょう。