水中をゆらゆらと漂う様子がかわいいウーパールーパーですが、実は変形して上陸することがあります。
ウーパールーパーは、メキシコサンショウウオというサンショウウオの一種で、幼形成熟(ネオテニー)という特殊な現象により幼生の姿のまま成熟した生き物です。
普通はそのまま幼生の姿で生涯を終えるのですが、ある条件化で普通のサンショウウオのように変形し始めることがあります。
このようにウーパールーパーが変形して上陸することを陸化と言います。
今回は、ウーパールーパーの陸化についてご紹介します。
ウーパールーパーが陸化する条件とは?

ウーパールーパーは生物学上「両生類」という分類に当てはまります。

ウーパールーパーに限らず、カエルやイモリ、サンショウウオなどの両生類が幼生の姿から成体の姿へ変わることを変態といいます。
たとえば、オタマジャクシに足が生えてカエルへと変わっていくのは変態です。

オタマジャクシからカエルへの変態途中経過
ほとんどの両生類は、変態と同時に生活様式も一変します。
両生類とは「一生涯のうち、水中でも陸上でも生活する」特性を持つ生物の分類です。
そのため、ウーパールーパーもカエル同様に陸上での生活を行わないとこの分類に違和感を感じますよね。
実は、ウーパールーパーも、ある条件下では変態が進行し成体のサラマンダーの姿へと変わることがあります。

ただし、普通に飼育している限り、ウーパールーパーが陸化することはまずありません。
ウーパールーパーが変態する条件はあまりよくわかっていませんが、どうやら水深に関係しているようです。
徐々に水深が浅くなり、環境が陸化していくと、それにあわせてウーパールーパーも変態するようです。

徐々に水深が浅くなる環境下でウーパールーパーは陸化する
そのため、陸地の多いアクアテラリウムで飼育している場合や、プラケースに浅く水を張って飼育していて水が蒸発した場合に、突然変態が始まることがあります。
ウーパールーパーが変態すると?
他の両生類の変態での変化
イモリやサンショウウオの幼生が変態し始めると、まず足が生え、続いて外鰓が短くなっていき、最終的にはなくなります。


カスミサンショウウオ
それと同時に顔つきも変わり、全体の雰囲気が変わっていきます。
ウーパールーパーはサンショウウオの仲間の中でも「マルクチサラマンダー科」というグループに属しています。
マルクチサラマンダー科にはタイガーサラマンダーやファイアサラマンダーなど、ペットトレードでは比較的有名な種が多く含まれていますが、日本には分布していません。
ウーパールーパーの陸化の予兆
ウーパールーパーの予兆として体が細くなっていきます。
そして顔の周りにあるエラやヒレと手足の水かきが消えていきます。
こういった変化が見られたらウーパールーパーが陸化の予兆だと思われます。
ウーパールーパーの陸化時の見た目の変化
ウーパールーパーが陸化した際の大きな特徴の一つは、見た目が黒っぽくなり、サンショウウオに近い姿になることです。
幼体の頃に顔の周りにあった可愛らしいエラはなくなります。


エラがなくなるのは他の両生類の動物と同じですね。
また、背びれや手足の水かきも消えていきます。
そして、手足は大きくなり、目にまぶたができて瞬きをするようになります。



ウーパールーパーは、陸化すると見た目が大きく変わります。
水中から主に地上での生活へ
水中での生活に適応していた特徴がなくなり、地上での生活に適応しています。
また、幼体の頃には必要なかった肺呼吸も可能になります。


寿命が短くなる
ウーパールーパーが上陸した際の寿命は、長くても5年程度と言われています。
一方、陸化しないウーパールーパーの寿命は5~8年ほどです。
ウーパールーパーを陸化させると、その寿命はかなり短くなり縮まることを知っておきましょう。
ウーパールーパーが上陸した姿は、ネットで検索すればたくさん出てきます。
ふわあああああ😭😭😭
— いっちゃん@プロ雀士&あやまんJAPANユース (@kitaharaizumi) March 15, 2019
ウーパールーパーって稀に陸化する個体がいるらしくて😭😭😭
陸化したウーパールーパーの姿がこちらです😭😭
なんか怒ってるしいいい😭😭😭
わたしのぱーくん(と、名付けました)が陸化したらどうしよう😭😭😭
それでも愛し続けることを誓います😭😭😭 pic.twitter.com/49nXyBiuYf
基本的に変態後は水に入らず陸上で生活するようになります。
カラーはウーパールーパーのカラーがそのまま引き継がれるので、アルビノならアルビノの、マーブルならマーブルの陸生サラマンダーとなります。



陸化するとウーパールーパーは寿命が短くなることに注意!
ウーパールーパーが陸化する理由とは?
ウーパールーパーが陸化する原因は、いくつかの要因が考えられます。
基本的にウーパールーパーは一生を水中で過ごす「幼形成熟(ネオテニー)」の生き物ですが、まれに陸上生活が可能な成体(サラマンダーの姿)に変態することがあります。
遺伝的要因
同じウーパールーパーの中でも一部の個体は生まれつき「変態する能力」を持っていて、何らかの刺激によって変態を始めることがあります。
これは「本来のサンショウウオとしての姿に戻る」現象である意味では自然なことと言えるのかも知れません。
飼育環境の変化
水温が高すぎる、水質の悪化、酸素不足など、水中での生活がストレスとなるような状態が続くと、陸化への変化を促すことがあります。
ホルモンの変化
さらに、ホルモンの変化も関係しています。
ヨウ素や甲状腺ホルモンの影響を強く受けた場合、通常は抑えられている変態のプロセスが進行し、エラが小さくなったり、皮膚が乾燥に耐えられるよう変化したりと、陸上での生活に適応する身体へと変わっていきます。
つまり、ウーパールーパーが陸化するのは、水中環境の悪化や遺伝的要素、そしてホルモンバランスの乱れなどが複雑に絡み合った結果なのです。
意図的にウーパールーパーを陸化させるには?
水位を下げれば陸化する(かも知れない)


陸生のマルクチサラマンダーが飼いたいのなら最初からタイガーサラマンダーやファイアサラマンダーを飼育すればいいですし、タイガーサラマンダーの幼生を飼育すれば変態も観察できます。
ですから、わざわざウーパールーパーの陸化に挑戦する必要はないかもしれませんが、あえてやってみたいという場合、徐々に飼育水槽の水深を下げてみましょう。
なお、水位を下げれば陸化するというのは諸説のうちの一説に過ぎません。
水位が直接の原因になるとは言い切れないが、間接的な影響はあるかも知れない程度に理解しておいてください。
水位が陸化に関係するかも知れない理論
理論としては以下の通りです。
水深が浅いと、水面と接する面積が広くなり、酸素濃度が高くなることがあります。
これは、肺呼吸への適応(=変態)を促す刺激になる可能性があります。
自然界では、水位の低下=干ばつや環境の悪化。
そうなると、「水中生活が難しいなら陸に上がろう」とする進化的スイッチが入るとも考えられています。
水位が低くて、水温も高く、水質も悪い…など、複数のストレス要因が重なると変態しやすくなる傾向があります。
つまり「水位だけで変態する」とは限らないけれど、「水位の低さが引き金になる」ことはあるかもしれません。
水深を急に下げるのはNG
このとき、急激に下げると水質が急変して弱ってしまうことがあるため、注意が必要です。
急激に水深を下げるのは危険!
水深を下げて変態しはじめたら、スポンジや発泡スチロールを浮かべて陸地を作り、上陸できるようにしてやりましょう。
特に変態直後の個体を陸地のない環境におくと、おぼれてしまうことがあります。
上陸後の飼育はタイガーサラマンダーなどを参考に、湿った土やミズゴケを敷いたケージで飼育します。
餌は生きた昆虫などになりますが、ツノガエル用のフードも食べるので、フードを使うほうが飼いやすいでしょう。



そもそもさせる必要があるのかって話はさておき、どうしても陸化させたいのであれば、飼育水槽の水位を段階的に下げていけば陸化する可能性があります。
ウーパールーパーの陸化を防ぐ4つのポイントとは?
ウーパールーパーが陸化をすれば見た目も大きく変わりますし、寿命も短くなります。
はっきり言ってしまえばウーパールーパーと言って多くの方がイメージするのは水生の物であって、陸化したウーパールーパーをイメージする方もほとんどいないでしょう。
また、ウーパールーパーは可愛いと思うけど、陸化した姿を可愛いと思えない方も多いのではないでしょうか。
ウーパールーパーの陸化か〜
— 📎 Aya ☂️ (@aya0698) January 3, 2018
するって話は聞いたことあるけど、粘膜も取れて固くなるのか〜すげぇ pic.twitter.com/w5gI52iJPc
そのためウーパールーパーが陸化するのを防ぎたいと考える方もいるのではないでしょうか。
ウーパールーパーの陸化を防ぐためには、適切な水温、水質、酸素供給、環境設定、食事、ストレス管理が不可欠です。
これらのポイントを守って飼育することで、ウーパールーパーの陸化を予防し健康に長生きできる環境を提供できます。
適切な水位、水温、水質を維持する
前述したように徐々に水位を下げることでウーパールーパーは陸化する可能性が高いため、逆にそれをしなければ良いのです。
つまり、水位が下がらないように日頃から注意していれば良いので、あまり難しくないですね。
その他、ウーパールーパーは冷水性の生物であり、適切な水温を保つことが陸化を防ぐために重要です。
水温は16〜18℃が理想的で水温が高すぎるとストレスを感じ、陸化の原因になることがあります。
また、水質の管理はウーパールーパーの健康に直結します。
水質が悪化するとストレスがかかり、陸化のリスクが高まります。
定期的な水換えと適切なフィルターの使用が必要です。


十分な酸素供給
水中の酸素量が不足すると、ウーパールーパーは陸化しやすくなります。
エアレーションを行い、水中に十分な酸素を供給することが重要です。
バランスの取れた食事
栄養バランスの良い食事を与えることも大切です。
ウーパールーパー専用のペレットや冷凍アカムシ、ブラインシュリンプなどを適切な量で与えるようにしましょう。


適切な環境を提供
ウーパールーパーの飼育環境には、隠れ家となる場所や適度な植物を配置することが大切です。
ウーパールーパーがストレスを感じにくい環境を作ることで、陸化を防ぐことができます。
また、飼育環境の変化や他の魚との混泳、頻繁な水槽掃除など、ストレスを与える要因をできるだけ避けることが重要です。
ウーパールーパーが陸化した場合の飼育方法
陸上生活の環境を整える
陸化したウーパールーパーを飼うときは、もう水中ではなく「陸の上」で生活する前提で環境を整えてあげる必要があります。
水槽は高さよりも横に広いものが向いていて、必ずフタをして脱走を防ぐようにします。
陸化後は水中ではなく陸上での生活になるため泳ぐスペースは不要です。
とは言え、カラカラに乾燥したケージ内では生きていけず体が乾いてしまうと命に関わるので体を濡らす水場は必要です。
自分の体を軽く濡らすことができるように、浅い水入れを用意しておくと安心です。
ただし、深すぎると出られなくなってしまうので注意しましょう。
全く泳げなくなるという事も無いのですが、呼吸方法がエラ呼吸から肺呼吸に変わるため、水中では溺れるリスクすらあります。
床材
床は湿った素材で覆っておきます。
具体的には湿らせたミズゴケやヤシガラ土、あるいは濡れたキッチンペーパーなどが使えます。
隠れ場所
住まいの中には、暗くて安心できる隠れ場所を作ってあげることも大切です。
これは石や流木などを使って作ることができ、日光が直接当たらないようにも注意しましょう。
温度は人間が少し涼しいと感じるくらい、18度から22度くらいを保つのが理想です。
湿度
また、空気の湿度も重要です。
陸化したウーパールーパーは湿った空気の中で暮らす必要があるため、霧吹きなどを使って1日に何度か周囲を湿らせてあげます。
ウーパールーパーが陸化した際の餌
陸化したウーパールーパーは、水中にいた頃とは食性が大きく変わります。
水中生活のときは赤虫や人工飼料を丸飲みしていましたが、陸上に適応したあとは動くものに反応するようになり、まるで小さなハンターのように餌を狙うようになります。
食べ方も変わり、丸飲みではなく、口にくわえてかじり取るようなスタイルに変化します。
生きた昆虫や虫系の餌
陸化にともない、餌としてふさわしいのは生きた昆虫やワームなど、動きや匂いのあるものになります。
たとえば、ミルワームは一般的に与えやすい餌ですが、外骨格が硬いため、与える際には頭を潰して柔らかくしてから与える方が安全です。
また、ワラジムシやデュビアといった小型の昆虫も消化によく、ウーパールーパーの動物的本能を刺激してくれます。
コオロギもおすすめの餌で、ピンセットで軽く動かしてやることで食欲を引き出すことができます。
さらに、シルクワーム(カイコの幼虫)は柔らかくて栄養価も高いため、特別な日のごちそうとしてもぴったりです。抵抗がなければ、レッドローチのような小型のゴキブリも非常に優れた餌となります。
陸化した個体には、ただ目の前に餌を置くだけではなかなか食いついてくれません。
冷凍や乾燥のエサは自ら動きませんので特にです。
ピンセットで餌を軽く動かしたり、目の前でゆらゆら揺らしたりすることで、ウーパールーパーは「これは生きている獲物だ」と認識しやすくなります。
食欲がないときには、口元の少し前からアプローチして、驚かせないようにそっと誘導してあげることが大切です。
人工飼料
陸上生活を送るようになったウーパールーパーには、従来の水中用の人工飼料はあまり向いていません。
においや動きが乏しいため、餌として認識されにくく、食いつきが悪くなることがあります。
どうしても人工餌を試したい場合は、爬虫類や両生類用の高タンパクなペースト状の餌などを検討してみるとよいかもしれませんが、嗜好性にかなりの個体差があるため慎重に試してみる必要があります。
エサを与える頻度
餌を与える頻度については、毎日与える必要はなく、週に2〜3回程度で十分です。
食べ過ぎは肥満や消化不良の原因となるため、1回の食事でお腹がややふっくらする程度にとどめましょう。
余った餌は放置せず、衛生管理のためにもその日のうちに取り除くのが理想です。
水分補給
餌だけでなく、水分補給にも注意が必要です。
昆虫類にはある程度の水分が含まれていますが、それだけでは足りないこともあるため、霧吹きで体を軽く湿らせたり、餌に水を少し垂らしてから与えるといった工夫が役立ちます。
餌の後に水入れのそばに誘導して、自分で体を湿らせるように促すのも良い方法です。
ウーパールーパーが陸化する条件とは?【まとめ】
ウーパールーパーの飼育水槽の水深を徐々に下げると、変態して上陸することがあります。
当然、変態後に再びウーパールーパーの姿に戻すことはできないので、意図して変態させる場合はそのつもりでいましょう。
意図せず変態させてしまった場合も、覚悟を決めて陸生サラマンダーとして飼育してやるしかありません。
ウーパールーパーのようなふわふわした浮遊感は楽しめませんが、慣れればケージに近寄っただけで隠れ家から出てくるくらい慣れるので、それはそれで飼えば楽しい生き物です。
陸化したウーパールーパーは、もはや水中でのんびり暮らしていたころとは全く別の姿になっています。
まるでサラマンダーのような生き物として扱い、動く虫を中心に、適切な頻度と方法で餌を与えていくことが、健康維持と長生きにつながるのです。
餌に興味を示さない、食欲が落ちているなど気になることがあれば、個体の体調や環境を一緒に見直していきましょう。
このように、陸化後のウーパールーパーは水中の生活を終え、陸での生活に適応していくため、まるでヤモリや他のサンショウウオのような環境を整えてあげる必要があるんです。
ちょっと手がかかるように感じるかもしれませんが、環境さえ整えれば安心して育てていけますよ。