コイチョウイボイモリの生態と飼育|水棲ではない?半水棲イボイモリの正しい理解

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コイチョウイボイモリ(Tylototriton kweichowensis)は、中国南部に分布するイボイモリ属(Tylototriton)の一種で、黒褐色の体に朱色~橙色のラインや斑紋が入る美しい外見から、「Kweichow Crocodile Newt」の英名でも知られています。

かつては「ズグロイボイモリ」と呼ばれたこともありますが、現在はこの和名が一般的です。

同じイボイモリでも、日本のイボイモリ(Echinotriton属)とは別属にあたります。


イボイモリの飼育方法はこちら

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目次

コイチョウイボイモリの生態

名前の由来

コイチョウイボイモリの名前をコイチョウ / イボ / イモリの3つに別けると「コイチョウ」の部分だけ意味が分からない方が多いのではないでしょうか。

「コイチョウ」という名称は、学名 kweichowensis に由来し、中国・貴州省(Kweichow)の旧表記を日本語化したものと考えられています。

ただし、和名の制定経緯については明確な資料は残っていません。

分布と生息環境

分布は中国の貴州省および雲南省北東部とされ、標高1,500~2,400m前後の山地に生息します。

自然下では、

・森林内の林床
・池や緩やかな流れの周辺
・石の下、倒木の下
・小型哺乳類の巣穴

など、湿度が高く直射日光の当たらない場所に潜むことが多いとされています。


生態的特徴|陸棲寄りの半水棲種

コイチョウイボイモリは、基本的には陸上生活を中心とする半水棲種です。

普段は林床で過ごし、

・繁殖期のみ水場に集まる
・産卵・交尾は水域または水際で行う

という生活スタイルを取ります。

「水棲イモリ」と表現されることがありますが、通年水中で生活する種ではありません。


繁殖

繁殖期は地域差がありますが、4~5月頃、水温が20℃前後になると繁殖行動が見られるとされています。

特徴的なのは、

・交尾は水中で行われる
・産卵は水中ではなく、水場近くの湿った場所で行われることが多い
・1回の産卵数はおよそ70~80個

孵化した幼生は、跳ねるようにして水場へ移動するという報告もあります。


食性

完全な動物食で、

・昆虫類
・ミミズ
・ワラジムシ
・陸貝類

などを捕食します。

飼育下では、ハニーワームやミミズに強い嗜好性を示す個体が多いとされ、特に雄は食が細い傾向がある、という報告があります。


寿命

正確なデータは限られていますが、

・野生下:約10~20年
・飼育下:約10~20年

とされることが多く、適切な環境下では長期飼育が可能な種です。


飼育の基本的な考え方

飼育形態

基本は陸棲レイアウトが推奨されます。

・湿度を保った床材(ミズゴケ、赤玉土、ヤシガラなど)
・常時浸かる水場は不要
・浅い水容器を設置する程度で十分

繁殖を狙う場合のみ、別途、水深のある繁殖用水槽を用意するのが一般的です。


温度管理

高温多湿の蒸れに注意が必要です。

・夏:25℃以下が望ましい
・30℃でも短期的には耐えるが、蒸れは厳禁
・冬:5℃以下にならないよう注意
・12℃を下回ると摂餌が鈍る個体が多い

高山性の種ですが、低温に特別強いわけではありません


主な給餌例:

・ハニーワーム
・小型コオロギ
・ミミズ
・人工飼料(慣れれば)

釣り餌用ミミズは薬品リスクがあるため、避けた方が無難です。


保全状況と流通

・IUCNレッドリスト:VU(危急種)
・CITES:附属書Ⅱ
・中国では国家重点保護野生動物(第2級)

2019年以降、輸出規制が強化され、今後の新規輸入は極めて困難とされています。

現在流通している個体の多くは、過去に輸入された個体、または国内CB個体と考えられます。


まとめ

コイチョウイボイモリは、

・陸棲寄りの半水棲イモリ
・繁殖期のみ水場を利用
・美しいが活動量は少なめ
・蒸れに弱く、湿度管理が重要

という、見た目と生態にギャップのある種です。

「よく動くペット」を求める人には向きませんが、じっくり環境を作り、静かな魅力を楽しむタイプの飼育者向けのイモリと言えるでしょう。

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