ヒメアマガエルは、日本各地に生息する小型のアマガエルで、その可愛らしい姿から飼育してみたいという方も多い人気種です。
しかし、小さな体ゆえに「何を食べるのか」「どんなエサを与えればよいのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
また、ヒメアマガエルはオタマジャクシの時期と成体とで、まったく異なる食性を持っているため、それぞれに適した食べ物を理解することが大切です。
この記事では、オタマジャクシ期と成体期に分けて、野生下・飼育下におけるヒメアマガエルの食べ物を詳しく解説します。
それぞれの時期に合ったエサを選ぶことで、ヒメアマガエルが健康に育ち、元気に暮らしてくれるはずです。
ヒメアマガエルのオタマジャクシが食べるもの
オタマジャクシ期のヒメアマガエルは、見た目だけでなく食性も成体とはまったく異なることが知られています。
この時期はまだ足も生えておらず、水中でゆっくりと生活しながら、植物を中心とした食べ物を選ぶ雑食性寄りの草食型です。
この食性は成長にともなって徐々に変化していくため、飼育環境では時期に応じた食事内容の調整が重要です。
野生下での主な食べ物
自然環境では、オタマジャクシは水中の藻類や枯れ葉、微細なプランクトンなどを中心に摂取しています。
それらは、水面や水底に自然に存在するもので、特に流れの少ない池や田んぼのような場所では豊富に見られます。
オタマジャクシたちは口元でゆっくりとこそぎ取るように、食べられる有機物を吸収していきます。
成長が進んでくると、死骸や他の生物の排泄物、たまに他のオタマジャクシまでも捕食することがあり、徐々に雑食傾向が強くなっていきます。
飼育下でのおすすめのエサとコツ
家庭でヒメアマガエルのオタマジャクシを育てる場合、エサ選びはとても重要です。
代表的なものは以下のとおりです。
- 沈下性の金魚・メダカ用フード(細粒)
- すりつぶした煮干しやゆで卵の黄身
- やわらかくゆでて刻んだ小松菜・ほうれん草
これらは水に沈めると食べやすく、摂取しやすくなります。
ただし注意点として、オタマジャクシは非常に小さいため、エサの粒が大きいと口に入りません。
必ず砕いたり、すりつぶしたりしてサイズ調整を行いましょう。
また、腐敗しやすいエサが多いため、水の汚れに敏感に対応し、毎日水替えや掃除を行うことが必要です。
水質悪化は一気に体調不良や死につながるため、食べさせ過ぎにも注意しましょう。
成体のヒメアマガエルが食べるもの
オタマジャクシの時期を終えて手足が生えそろい、尻尾が消えたヒメアマガエルは、完全な陸上生活の昆虫食生物となります。
水草をかじっていた頃とは打って変わり、動く小さな虫をハンターのように狙うスタイルに変化します。
特にヒメアマガエルは体が小さいため、エサにもサイズの制限がある点に注意が必要です。
ここでは、野生での食べ物と、飼育下でのおすすめのエサについて紹介します。
野生での主な食べ物
野生のヒメアマガエルは、森の中や草むら、水辺の近くで暮らしながら、体のサイズに合った小さな昆虫や節足動物を主に食べています。
具体的には、以下のような生き物がエサになります。
- ユスリカなどの小型のハエ
- 小さなアブラムシやコバエ
- アリや小さな甲虫やクモの子ども
- ノミバエやチョウの幼虫など
自らエサを探して動き回るというよりも、待ち伏せ型の捕食スタイルで、近づいた獲物に素早く舌を伸ばして捕らえるのが特徴です。
飼育下で与えるべきエサとは?

家庭で飼う場合も、ヒメアマガエルには基本的に生きた小型の虫を与えるのが理想です。
特に人気のあるエサは以下の通りです。
- ピンヘッドコオロギ(生まれたての小さなコオロギ)
- ショウジョウバエ(羽なしタイプが扱いやすい)
- ハニーワーム(小さい個体のみ)
これらはペットショップや爬虫類専門店、通販などで入手できます。
体の小さいヒメアマガエルにとって、エサのサイズが合わないと食べられずに餓死する危険もあります。
常に「自分の口よりも小さい」サイズのエサを選びましょう。
人工飼料は使えるの?
ヒメアマガエルのような小型の樹上性カエルは、人工飼料を好まない傾向にあります。
中にはレオパゲルや人工昆虫ゼリーを舐める個体もいますが、あくまで例外。
ほとんどの個体は動くものにしか興味を示さないため、ピンセットでエサを揺らすなどして食いつきを誘導するテクニックが必要になります。
慣れてくれば少しずつ人工飼料に移行できる場合もありますが、最初からそれだけで飼うのはリスクが高いため、基本は生き餌中心で考えましょう。
よくある質問
Q1:どのくらいの頻度でエサを与えるべき?
ヒメアマガエルの食事頻度は、成長段階によって大きく異なります。
年齢や体調に応じた給餌が、健康維持のカギとなります。
オタマジャクシ期(~手足が生える前)
1日2回程度、少量ずつ与えるのが基本です。
藻や植物片をゆっくりと吸い取るように食べるため、一度に大量に食べるわけではありません。
腐敗しやすい餌を扱うため、水の汚れにも十分注意し、食べ残しの除去とこまめな水替えが必須です。
ベビー期(上陸直後~尻尾が完全になくなる頃)
この時期はエネルギー消費が激しく、1日1回を目安に毎日与えるのが望ましいです。
まだまだ体が小さいため、餌のサイズに十分気をつけ、ピンヘッドコオロギや羽なしショウジョウバエなどを用意します。
この頃から動く餌に対する反応が急激に高まります。
成体期(体長が安定し、尻尾も完全に消えた以降)
1日おき~2日に1回程度でOKです。
エネルギー消費が落ち着くため、毎日与える必要はありません。
与えすぎると肥満になりやすく、便の出が悪くなる場合もありますので、お腹のふくらみやフンの状態を見ながら調整しましょう。
シニア期(動きが鈍くなってくる年齢)
加齢により代謝が落ちるため、3~4日に1回の給餌でも十分です。
食欲が落ちてくる個体も多いため、無理に食べさせず、食べる量が少なくても安定していればOKと考えてください。
むしろ、給餌のたびに食べるかどうかを観察することが大切です。
Q2:人工飼料だけでも飼育は可能?
A:ヒメアマガエルの場合は、ほぼ不可能に近いです。
ニホンアマガエルであれば、幼体のころから人工飼料に慣らすことで食べてくれる個体もいます。
また、空腹が極まれば静止した餌にも反応することがあります。
しかし、ヒメアマガエルは、より小型で視覚に強く依存した捕食スタイルを持っており、「動いているかどうか」が食欲スイッチになる傾向が非常に強いです。
そのため、人工飼料をピンセットで揺らしても全く興味を示さない個体も多く、生き餌が基本で、人工飼料だけでは飼育が難しいと考えてください。
どうしても人工飼料を試したい場合は、羽のないショウジョウバエやピンヘッドコオロギなどの生餌を併用しながら、少しずつ慣らしていく必要があります。
ただし、それでも食べない個体の方が多く、無理に切り替えるのはリスクが大きいでしょう。
Q3:餌を食べないときの対処法は?
A:まずは環境と体調のチェックを。
ヒメアマガエルがエサを食べないときは、以下のような原因が考えられます。
- 温度や湿度が適していない
- エサが大きすぎて口に入らない
- エサが動かず、興味を持たれていない
- カエル自身が脱皮前や消化中などで一時的に食欲が落ちている
生き餌を使ってみたり、環境を見直すことで改善することが多いですが、長期間(1週間以上)食べない場合は病気の可能性も考え、対策が必要です。
まとめ:ヒメアマガエルに合った食事で健康に育てよう
ヒメアマガエルは、オタマジャクシから成体へと成長する過程で食性が大きく変化する、非常に繊細な生き物です。
特に成体になってからは体のサイズが極めて小さいため、食べられる餌も限られ、適したサイズの小さな生餌しか受け付けない個体がほとんどです。
また、他のカエルと比べても人工飼料への食いつきが非常に悪く、「動いているものにしか反応しない」傾向が特に強いため、飼育者の工夫と観察力が求められます。
こうした点から、ヒメアマガエルは一見可愛らしくても、カエルの中では飼育難易度がやや高めの部類に入ると言えるでしょう。
健康に育てるためには、成長段階に応じた適切な餌を選び、量と頻度にも気を配りながら丁寧に飼育することが何より大切です。
小さな命をしっかりと支えていくためにも、エサ選びの基本をしっかり押さえておきましょう。