フタホシコオロギは、爬虫類や両生類の定番エサとして広く流通している昆虫です。
栄養価が高く、繁殖もしやすいため、自宅で飼育・ストックしておきたいと考える方も多いでしょう。
一方で、「すぐ死ぬ」「臭いが気になる」「鳴き声がうるさい」「繁殖がうまくいかない」といった悩みもよく聞かれます。
実はフタホシコオロギの飼育は、いくつかのポイントさえ押さえればそれほど難しくありません。
この記事では、フタホシコオロギを長生きさせる飼育方法から、エサ・温度管理・繁殖のコツまで、初心者でも失敗しにくい形で詳しく解説します。
フタホシコオロギとは?特徴と基本情報

フタホシコオロギは、爬虫類や両生類のエサ用として日本で最も一般的に流通しているコオロギの一種です。
体の付け根付近にある左右2つの白い斑点が特徴で、名前の由来にもなっています。
もともとは東南アジアを中心とした温暖な地域に分布する昆虫で、高温環境を好みます。
そのため、日本では野外で自然繁殖することはほとんどなく、ペットショップで販売されている個体はすべて人為的に繁殖されたものです。
エサ用として人気が高い理由は、栄養価が高く、動きが活発で捕食反応を引き出しやすい点にあります。
ウーパールーパーやカエル、トカゲ類など、多くの生き物が好んで食べるため、定番の生餌として定着しています。
よく比較される種類に「ヨーロッパイエコオロギ」がありますが、フタホシコオロギの方が体が大きく、成長も早い傾向があります。
その一方で、鳴き声が大きく、臭いが出やすいというデメリットもあります。
飼育や繁殖はそれほど難しくありませんが、温度管理と過密対策を怠ると一気に死んでしまうこともあります。
初心者がつまずきやすいポイントを理解したうえで飼育することが重要です。
フタホシコオロギの飼育
必要なもの
フタホシコオロギの飼育は、専用の器具を揃えなくても始められます。
ただし、最低限そろえるものを間違えると、死亡率が一気に上がるため注意が必要です。
飼育ケース

まず飼育ケースですが、プラケースや衣装ケースなど、通気性を確保できるフタ付き容器であれば問題ありません。
コオロギは脱走が得意なので、フタは必須です。側面やフタに通気穴をあけ、金網や不織布で塞いでおくと安心です。
レイアウト

床材
床材については、基本的に敷かなくても飼育できます。
むしろ床材を敷くとフンやエサの残りが溜まりやすく、蒸れや臭いの原因になることがあります。
そのため、キッチンペーパーや新聞紙を敷き、汚れたら交換する方法が管理しやすいです。
隠れ家
ケース内には、必ず隠れ家になるものを入れます。
代表的なのは卵パックや段ボールです。
フタホシコオロギは重なって隠れる習性があり、隠れ家がないとストレスや共食いが起こりやすくなります。
また、登れる構造物を入れておくことで、ケース内のスペースを立体的に使えるようになり、過密状態の緩和にもつながります。
卵パックを縦に立てるだけでも十分効果があります。
保温器具
特別な照明や紫外線ライトは必要ありませんが、後述する温度管理のためにパネルヒーターや保温器具を用意しておくと、安定した飼育がしやすくなります。
温度管理

フタホシコオロギの飼育で、最も重要なのが温度管理です。
エサやケースよりも、温度が合っているかどうかで生存率が大きく変わります。
適温の目安は25〜30℃前後です。
この範囲であれば活動が活発になり、エサ食いも良くなります。
反対に、20℃を下回ると動きが鈍くなり、弱った個体から死んでいくことがあります。
冬場は特に注意が必要で、室温任せにしていると簡単に低温になります。
パネルヒーターをケースの側面や底面の一部に設置し、ケース全体を均一に温めないことがポイントです。
温度差を作ることで、コオロギが自分で快適な場所を選べるようになります。
湿度管理
湿度については、高すぎると蒸れて大量死の原因になります。
フタホシコオロギは乾燥には比較的強い一方で、多湿環境には弱いです。
ケース内が常にジメジメしている状態は避けてください。
水分は空気中の湿度ではなく、エサとして与える野菜などから補給させるのが基本です。
霧吹きでケース内を濡らす必要はなく、むしろ逆効果になることが多いです。
エサの与え方

フタホシコオロギは雑食性ですが、与えるエサの内容によって寿命や臭い、繁殖率が大きく変わります。
何でも食べるからといって適当に与えるのはおすすめできません。
主食
主食として使いやすいのは、市販のコオロギ用フードや、熱帯魚用・爬虫類用の人工飼料です。
これらは栄養バランスが比較的安定しており、エサ用昆虫としての栄養価を保ちやすいメリットがあります。
野菜
野菜も併用すると、水分補給とビタミン補給を同時に行えます。よく使われるのは、ニンジン、キャベツ、小松菜などです。
ただし、水分の多い野菜を大量に入れるとケース内が湿りやすくなるため、少量ずつ・こまめに交換することが重要です。
水入れは不要
水入れを設置する方法はおすすめされません。
コオロギは溺れやすく、死亡事故の原因になります。
水分は基本的に野菜から摂らせる形で問題ありません。
NG食材
与えてはいけないものとして注意したいのは、腐りやすい食品や油分・糖分の多いものです。
果物や人間の食べ残しを入れると、カビや悪臭の原因になりやすく、ケース内環境が急激に悪化します。
エサは常に入れっぱなしにするのではなく、食べ残しが出てきたら早めに取り除きます。
この管理を徹底するだけでも、臭いと大量死のリスクは大きく下げられます。
長生きさせるコツ

フタホシコオロギが短期間で死んでしまう原因の多くは、病気ではなく飼育環境の悪化です。
特に「蒸れ」「過密」「汚れ」の3つが重なると、大量死が起こりやすくなります。
過密
まず過密状態は、最も死亡率を高める要因です。
ケース内に個体数が多すぎると、踏みつけや共食いが増え、弱った個体から次々に死んでいきます。
購入直後は1ケースにまとめがちですが、数が多い場合は早めにケースを分けることが重要です。
蒸れ
次に蒸れです。床材にフンや食べ残しが溜まり、湿度が上がると、フタホシコオロギは一気に弱ります。
床材を使わず、キッチンペーパーや新聞紙を敷いて汚れたら交換する方式にすると管理が楽になります。
汚れ
掃除は毎日完璧に行う必要はありませんが、明らかに腐りかけたエサや、死骸は見つけ次第取り除きます。
死骸を放置すると、それを食べた個体から体調を崩すこともあります。
また、隠れ家の量も重要です。
卵パックが少ないと、落ち着ける場所がなくストレスが溜まります。目安としては、コオロギがほぼ全員隠れられる量を用意すると安定します。
繁殖方法

フタホシコオロギは、条件さえ整えば家庭でも比較的簡単に繁殖できる昆虫です。
安定して増やしたい場合は、エサ用ストックとは別に繁殖用ケースを用意すると管理しやすくなります。
オスとメスの見分け方
まずオスとメスの見分け方ですが、メスには腹部の後方に産卵管と呼ばれる細長い突起があります。
オスにはこれがなく、成熟すると鳴き声を出すようになります。
繁殖を狙う場合は、成虫が十分に混ざっている状態が理想です。
産卵床
産卵床には、湿らせた赤玉土やバーミキュライトを小さな容器に入れて使います。
深さは2〜3cmほどあれば十分で、表面が軽く湿っている状態を保ちます。水を含ませすぎると卵が腐る原因になるため注意してください。
産卵床をケース内に設置すると、メスはそこに産卵します。
隔離
数日〜1週間ほど設置したら、卵が入っている可能性が高いため、産卵床だけを別ケースに移動させます。
成虫と同居させたままだと、卵や孵化した幼虫が食べられてしまいます。
孵化までの期間は、温度にもよりますがおおよそ10〜14日程度です。
孵化後の幼体は非常に小さく、乾燥と踏みつけに弱いため、ケース内は清潔に保ち、エサも細かく砕いて与えます。
フタホシコオロギ飼育でよくあるトラブル

フタホシコオロギの飼育では、初心者ほど「突然死んだ」「臭くなった」「うるさい」といったトラブルに直面しやすいです。
多くは飼育環境を見直すことで改善できます。
騒音トラブル
まず多いのが鳴き声がうるさいという問題です。
鳴くのはオスのみで、特に成熟した個体が高温環境に置かれると活発に鳴きます。どうしても気になる場合は、オスの数を減らすか、成虫になる前のサイズを中心に飼育することで軽減できます。
臭いが出る
次に臭いが出るケースです。
これはフンや食べ残しが溜まり、ケース内が蒸れていることが原因です。
床材を使っている場合は撤去し、キッチンペーパー方式に切り替えるだけでも臭いはかなり抑えられます。エサの入れすぎも見直してください。
大量死
大量死が起きる場合は、温度低下・蒸れ・過密のいずれか、または複合的な原因であることがほとんどです。
特に冬場の温度不足と、夏場の蒸れには注意が必要です。
一匹死ぬと連鎖的に弱ることがあるため、死骸はすぐに取り除きます。
脱走
また、脱走も意外と多いトラブルです。
フタホシコオロギは隙間があれば簡単に逃げ出します。
通気穴は細かい金網や不織布で塞ぎ、フタの閉め忘れにも注意しましょう。
フタホシコオロギはこんな人に向いている

フタホシコオロギの飼育は、エサ用昆虫を安定して確保したい人に特に向いています。
ペットショップでその都度購入するよりも、ストックや自家繁殖ができれば、コストや入手の手間を大きく減らせます。
ウーパールーパーやカエル、トカゲなど、動くエサに反応しやすい生き物を飼っている人にとっては、非常に使い勝手の良い餌です。
サイズ展開も幅広く、成長段階に合わせて与えられる点もメリットです。
また、多少の試行錯誤を楽しめる人にも向いています。
温度管理やケース内環境を工夫することで、死亡率が目に見えて下がり、飼育のコツが掴めてきます。
こうした調整が苦にならない人であれば、長期的に安定した飼育が可能です。
一方で、鳴き声や臭いに強いストレスを感じる人や、こまめな管理が難しい人にはあまり向いていません。
完全放置で飼える昆虫ではないため、最低限の世話は必要です。
自分の飼育スタイルや生活環境に合っているかを考えたうえで導入すると、フタホシコオロギは非常に頼れる存在になります。
まとめ
フタホシコオロギは、温度と湿度、過密を避けた管理を意識するだけで、初心者でも十分に飼育・ストックが可能なエサ用昆虫です。
特に25〜30℃の温度帯を維持し、蒸れを防ぐことが生存率を大きく左右します。
床材をシンプルにし、エサの与えすぎや汚れをこまめに取り除くことで、臭いや大量死といったトラブルも防ぎやすくなります。隠れ家を十分に用意することも、ストレス軽減と共食い防止に効果的です。
繁殖も難易度は高くなく、産卵床を分けて管理すれば自家繁殖も現実的です。安定して生餌を確保したい方にとって、フタホシコオロギはコスト面・実用面の両方で優れた選択肢といえるでしょう。
