デュビアは、爬虫類や両生類のエサとして使われることが多い昆虫ですが、「自分で繁殖させられるのか」「ゴキブリの仲間だから不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実際、デュビアは条件さえ整えば家庭でも比較的安定して繁殖させることができ、市販の生餌を買い続けるよりもコストを抑えられるケースもあります。
ただし、温度管理やケースの環境を間違えると、増えない・臭う・管理が大変になることもあります。
この記事では、デュビアの基本的な繁殖方法を中心に、飼育環境の作り方や注意点、両生類のエサとして使う際に知っておきたいポイントまで、初心者にも分かりやすく解説します。
「デュビアの繁殖に興味はあるけど不安がある」という方は、ぜひ参考にしてください。
デュビアとは?繁殖前に知っておきたい基本情報

デュビアは、爬虫類や両生類のエサとして流通している昆虫で、正式には「アルゼンチンモリゴキブリ」と呼ばれる種類です。
名前にゴキブリと付くため強い抵抗を感じる人も多いですが、いわゆる家庭に出るゴキブリとは性質が大きく異なります。
最大の特徴は、飛ばない・壁を登れない・繁殖速度が比較的穏やかという点です。
そのため、エサ用昆虫の中では「管理しやすい種類」として扱われることが多く、コオロギの代替として使われるケースも増えています。
また、デュビアは栄養価が高く、脂質やタンパク質をしっかり含んでいるため、成長期の個体や体力をつけたいタイミングの補助餌として利用されることもあります。
一方で、硬めの外皮を持つため、すべての両生類に万能というわけではなく、与え方やサイズ選びには注意が必要です。
繁殖を考える前に知っておきたいのは、デュビアは「自然に爆発的に増える昆虫ではない」という点です。
適切な温度と環境が整ってはじめて繁殖が進むため、放置して勝手に増え続けるような心配はあまりありません。
この性質が、自家繁殖を検討しやすい理由のひとつにもなっています。
まずは、デュビアがどんな昆虫で、どんな特徴を持っているのかを正しく理解したうえで、繁殖や飼育を考えることが大切です。
デュビアは家庭で繁殖できる?

結論から言うと、デュビアは家庭でも繁殖させることが可能です。
特別な設備が必須というわけではなく、温度と環境をある程度整えてあげれば、少しずつ数が増えていきます。
ただし、「誰でも簡単にどんどん増える」というタイプではありません。
室温が低すぎたり、ケース内の環境が合っていなかったりすると、ほとんど繁殖しないまま終わることもあります。
そのため、コオロギのように短期間で大量に増やしたい人には、やや物足りなく感じるかもしれません。

一方で、急激に増えすぎないという点は、自家繁殖を始めるうえではメリットでもあります。
管理が追いつかなくなるリスクが低く、「気づいたら手に負えない数になっていた」という状況になりにくいからです。
また、デュビアは卵を産むのではなく、体内で卵を育ててから幼体を産む「卵胎生」に近い繁殖方法をとります。
そのため、卵の管理や孵化の手間がなく、繁殖の工程自体は比較的シンプルです。
総合的に見ると、デュビアの繁殖は
・生餌を自家管理したい人
・多少時間をかけて安定供給できれば良い人
・コストを抑えたい人
には向いていますが、
・短期間で大量に増やしたい
・温度管理をしたくない
という人にはあまり向いていません。
まずは「自分の飼育スタイルに合うかどうか」を考えたうえで、繁殖にチャレンジするか判断すると失敗しにくくなります。
デュビアの繁殖に必要な飼育環境

デュビアの繁殖を成功させるうえで、最も重要なのは「ケース内の環境づくり」です。
特別な器具は必要ありませんが、いくつかのポイントを押さえておかないと、ほとんど増えないまま終わってしまうこともあります。
プラケースでOK
まず飼育ケースは、フタ付きのプラケースや衣装ケースなどで十分です。
ガラス水槽である必要はなく、通気穴を適度にあけたシンプルな容器で問題ありません。
デュビアは壁を登ったり飛んだりしないため、脱走リスクは比較的低いですが、フタは必ず用意しておきましょう。
隠れ家を配置
ケース内には、隠れ家として卵パックや段ボールを立てて配置します。
これは単なる隠れ場所というだけでなく、デュビア同士が重なりすぎるのを防ぎ、ストレスを減らす役割もあります。
に寝かせるよりも、縦に立てて入れる方がスペースを有効に使えます。
温度
繁殖に大きく影響するのが温度です。
デュビアは低温環境ではほとんど繁殖せず、活動自体も鈍くなります。
一般的には25℃以上を安定して保てる環境が望ましく、温度が不足すると「生きてはいるが増えない」という状態になりやすいです。
そのため、季節によってはパネルヒーターなどを使ってケース全体を暖める必要があります。
床材
床材については、基本的に不要です。
床材を敷くと掃除が大変になり、フンや餌の残りが溜まって臭いの原因にもなります。
底面は何も敷かず、汚れたら拭き取る、という管理方法の方が繁殖環境としても安定しやすくなります。
デュビアの繁殖方法
デュビアの繁殖は、流れ自体はとてもシンプルです。
ただし、結果が出るまでにある程度の時間がかかるため、「何が起きていれば順調なのか」を知っておくことが大切です。
オスメスが揃っていれば準備はOK
まず、繁殖を始めるにはオスとメスがそろっている必要があります。
市販されているデュビアはサイズ混合で販売されていることが多く、その中に成体のオス・メスが含まれていれば特別な準備をしなくても繁殖は可能です。
最初から完璧な比率をそろえる必要はなく、少数からでも問題ありません。
卵の回収や孵化させる作業は不要
環境が整うと、デュビアはケース内で交尾を行い、メスの体内で幼体が育ちます。
デュビアは卵を外に産み落とすタイプではないため、卵を回収したり、孵化させたりといった作業は不要です。
この点は、他の昆虫と比べても大きな特徴と言えます。
増えるのには時間がかかる
繁殖が順調に進んでいる場合、しばらくするとケース内に小さなデュビアの幼体が見られるようになります。
ただし、温度や環境によって差が大きく、すぐに増え始めるとは限りません。
数週間から数か月ほどかかることも珍しくなく、「気づいたら少しずつ増えていた」というケースが多いです。
生まれた後も分離は不要
幼体が生まれたあとは、特別な分離飼育をしなくても、そのまま同じケースで管理できます。
親に食べられてしまうことはほとんどなく、隠れ家がしっかり用意されていれば、自然に成長していきます。
繁殖がうまくいかない原因と対処

デュビアの繁殖が思うように進まない場合、ほとんどのケースで原因は限られています。
個体の問題というよりも、飼育環境や管理方法に原因があることが多いため、ひとつずつ確認していくことが大切です。
温度不足
まず最も多い原因が温度不足です。
デュビアは生存するだけであれば比較的低い温度でも問題ありませんが、繁殖となると話は別で、温度が足りないとほとんど増えません。
「死なないけれど増えない」という状態が続いている場合は、ケース内の温度が繁殖に適していない可能性が高いです。
特に冬場や夜間は、想像以上に温度が下がっていることがあります。
隠れ家の不足
次に多いのが、隠れ家の不足や配置の問題です。
卵パックなどが少なすぎたり、平置きで詰め込まれていたりすると、デュビア同士が重なりすぎてストレスがかかり、繁殖が進みにくくなります。
縦方向にスペースを作り、個体が分散できる環境を意識すると改善することがあります。
餌の与え方
エサの与え方も重要なポイントです。
エサが不足していたり、偏った内容になっていると、メスの体力が落ちて繁殖が止まってしまうことがあります。
一方で、与えすぎてケース内が汚れてしまうと、臭いや環境悪化につながり、結果的に繁殖に悪影響を与えます。
食べ残しが出にくい量を意識し、こまめに状態を確認することが大切です。
ケース内が不衛生
また、ケース内が不衛生になっている場合も注意が必要です。
フンや食べ残しが溜まりすぎると、環境が悪化し、活動自体が鈍くなることがあります。
床材を敷いていない場合でも、定期的にケース底面を拭き取るだけで、繁殖環境はかなり安定します。
デュビアの飼育で気をつけたいポイント

デュビアを繁殖させる場合、単に増やすことだけでなく、日常的な飼育管理も重要になります。
管理を誤ると、繁殖が止まるだけでなく、臭いやストレスの原因にもなってしまいます。
臭い
まず気になる点として多いのが臭いです。
デュビア自体が強い臭いを発するわけではありませんが、フンや食べ残しが溜まることで、ケース内が不快な状態になることがあります。
特に水分の多いエサを与えすぎると、腐敗が進みやすくなるため注意が必要です。エサは食べ切れる量を意識し、残ったものは早めに取り除くようにしましょう。
掃除の頻度
掃除の頻度については、毎日完璧に行う必要はありませんが、定期的なチェックは欠かせません。
卵パックの裏やケースの底に汚れが溜まりやすいため、数週間に一度は中を確認し、汚れている部分を拭き取るだけでも環境はかなり改善されます。
床材を使っていない場合、この作業はそれほど手間にはなりません。
個体数の調整
繁殖が順調に進むと、個体数が徐々に増えていきます。
数が増えすぎると、エサや隠れ家のスペースが不足し、環境が悪化しやすくなります。
その場合は、ケースを分ける、エサ用として間引くなどして、個体数を調整することも大切です。
急激な環境変化を避ける
また、飼育中は急激な環境変化を避けることも意識してください。
温度の急変やケースの頻繁な移動は、デュビアにとって大きなストレスになります。
繁殖を安定させたい場合は、なるべく同じ環境を維持し、必要最低限の手入れにとどめる方がうまくいくことが多いです。
デュビアは両生類のエサとして使える?

デュビアは爬虫類用のエサとして知られていますが、条件次第では両生類のエサとして使われることもあります。
ただし、すべての両生類に適しているわけではなく、種類や個体の状態によって向き・不向きが分かれます。
サイズが大きくなりやすい
まず理解しておきたいのは、デュビアは体表が比較的硬く、サイズも大きくなりやすいという点です。
そのため、口が小さい両生類や、柔らかいエサを好む種類には向いていません。
無理に与えると、食べ残しや消化不良の原因になることがあります。
一方で、口が大きく、ある程度しっかりしたエサを食べられる両生類であれば、補助的なエサとして使えるケースもあります。
様子を見ながら与える
その場合でも、いきなり主食にするのではなく、サイズの小さい個体を選び、様子を見ながら与えることが重要です。
また、デュビアは動きがそれほど激しくないため、動くものに強く反応する両生類では、食いつきが悪いこともあります。
そのような場合は、他のエサと併用し、「選択肢のひとつ」として位置づける方が無難です。
栄養面の注意
栄養面についても注意が必要です。
デュビアは高タンパク・高脂質な傾向があるため、与えすぎると栄養が偏る可能性があります。
両生類に与える場合は、頻度を抑え、あくまでローテーションの一部として考えると安心です。
デュビア繁殖はどんな人に向いている?

デュビアの繁殖は、すべての飼育者にとって最適な選択肢というわけではありません。
向いている人と、あまり向いていない人がはっきり分かれるため、始める前に自分のスタイルと合っているかを考えておくことが大切です。
向いている人
まず、デュビア繁殖が向いているのは、生餌を継続的に使っている人です。
市販の生餌をその都度購入する手間やコストを減らしたいと考えている場合、自家繁殖は現実的な選択肢になります。
また、短期間で大量に増やすことを求めず、「少しずつ安定して確保できれば良い」と考えている人にも向いています。
向いてない人
一方で、温度管理やケース内のチェックをほとんどしたくない人には、あまり向いていません。
デュビアは放置しても死ににくい昆虫ではありますが、繁殖となると一定の管理が必要になります。
環境を整えること自体が負担に感じる場合は、市販品を利用した方がストレスは少ないでしょう。
また、虫そのものに強い抵抗感がある場合も、無理に繁殖する必要はありません。
エサとしてのメリットはありますが、管理中に強い不快感を覚えてしまうと、結果的に飼育自体が苦痛になってしまいます。
その場合は、冷凍餌や他の昆虫を選ぶという選択肢も十分にあります。
まとめ
デュビアの繁殖は、特別に難しい作業が必要なわけではありませんが、温度管理や飼育環境を整えることが前提になります。放置して勝手に増えるタイプの昆虫ではないため、長期的な視点で安定した環境を維持することが大切です。
繁殖を成功させるためには、ケース内の温度を保ち、隠れ家となる卵パックを十分に用意し、エサや掃除の管理を適切に行うことが基本になります。これらが整っていれば、少しずつではありますが、家庭でもデュビアを増やしていくことは可能です。
また、デュビアは両生類のエサとして使える場面もありますが、すべての種類に向いているわけではありません。サイズや頻度を調整し、他のエサと併用しながら様子を見ることが重要です。
自家繁殖は必須ではありませんが、生餌を継続して使う飼育スタイルの人にとっては、コスト面や管理の面でメリットになる場合もあります。自分の環境や性格に合っているかを考えたうえで、無理のない形で取り入れてみるとよいでしょう。
