イエアメガエルはその愛らしい見た目と、比較的飼育しやすい性格から人気のあるペットです。
単体の飼育でも十分に癒される存在ですが、複数匹を一緒に飼うことで、思いがけない仕草や関わり合いが見られるのも魅力のひとつ。
「この子たち、まさかこんな行動するの!?」
といった、多頭飼いならではの“予想不可能のコラボの可愛さ”にハマる飼育者も多いのです。
とはいえ、イエアメガエルの多頭飼いには気をつけなければならない点もあります。
この記事では、トラブルを防ぎつつ、楽しくイエアメガエルの多頭飼いを続けるためのポイントをわかりやすく解説していきます。
イエアメガエルの多頭飼いのメリットとは?

イエアメガエルは温厚でおとなしい性格のカエルとして知られており、一見すると多頭飼いに向いていそうに思えます。実際、複数匹を同じガラスケージで飼っている飼育者も少なくありません。
ただし、「多頭飼いができる=安心して放っておける」というわけではありません。
個体差によって性格や行動にはバラつきがあり、縄張り意識やエサの取り合いなどによるトラブルが起こることもあります。
基本的にイエアメガエルの多頭飼いは可能ではあるが、条件付きで慎重に行うべきというのが実情です。安
易に複数匹を同居させると、ケンカやストレスによる不調の原因になるため、しっかりと準備と観察が必要になります。
個体ごとの違いを観察
イエアメガエルを多頭飼いする最大の魅力は、個体ごとの違いを間近で観察できることです。
見た目が似ていても、じっくり観察していると、それぞれに性格や行動パターンの違いがあるのが分かってきます。
例えば、エサにすぐ飛びつくタイプや、隅でじっとしている慎重派など、思わず名前をつけたくなるような個性が見えてきて、飼育の楽しみがグッと深まります。
並んでいる姿が癒し
また、複数匹で並んでいる姿そのものが癒しになるというのも、多頭飼いならではの魅力です。
ふとした瞬間にぴったり寄り添っていたり、同時に同じ方向を見ていたりすると、思わず写真を撮りたくなるような可愛らしさがあります。
予想外の行動が見られるのも、多頭飼いならでは。
突然片方がもう一方に乗っかってしまったり、ぴょんと跳ねた拍子にぶつかって驚いていたりと、1匹飼育ではなかなか見られない“ちょっとした事件”が起きるのも、観察好きにはたまらないポイントです。
最初から複数飼育する際の注意点

イエアメガエルをお迎えするタイミングで、あらかじめ複数匹を一緒に飼う場合は、最初から同じ環境で慣れさせることができるという点で有利です。
ただし、それでもいくつか重要な注意点があります。
同程度の体格を選ぶ
まず大前提として、体格が同程度の個体を選ぶことが非常に重要です。
大きさに差があると、小さい個体がエサを取られがちになるだけでなく、イエアメガエル同士の共食いのリスクが高まります。

イエアメガエルは動くものを「エサ」と認識しやすいため、極端な体格差があると、大きい個体が小さい個体を誤って飲み込もうとする事故が実際に起こり得ます。
飼育スペースの広さ
また、飼育スペースの広さにも配慮が必要です。
狭いガラスケージ内に複数匹を詰め込むと、逃げ場がなくストレスが溜まりやすくなります。
広めのケージを選び、エサ場・隠れ家・水場などを複数用意して、縄張りの分散を図りましょう。
最初の数日はこまめに観察
そして、最初の数日はこまめな観察がカギです。
どちらかが一方的に追いかけたり、じっと隅で動かなくなっていたりする場合は、ストレスや威嚇のサインである可能性があります。
異変に早く気づけるよう、行動をしっかりチェックしましょう。
相性を聞いてから購入できればなおよし
なお、同じペットショップで複数匹を購入する場合は、事前に店員さんに「この子たちは一緒に飼っても大丈夫そうか」といった相性について相談しておくのもおすすめです。
販売時に一緒のケージで過ごしていた個体同士であれば、環境やニオイに慣れており、トラブルが起きにくい傾向があります。
あとから追加飼育する場合の注意点

新入りいじめに注意!
すでに1匹飼育しているところに、あとから別のイエアメガエルを追加する場合は、新入りを受け入れてもらえるとは限らないという前提で慎重に進める必要があります。
とくに先住個体がその環境にすっかり慣れている場合、テリトリー意識や警戒心から攻撃的な反応を示すこともあります。
共食いリスク
また、ここでもイエアメガエルの共食いのリスクには十分注意してください。
体格差がある場合は特に危険で、大きい個体が小さい新入りを「エサ」と誤認して噛みつく、あるいは丸飲みしようとする事故が発生することがあります。
ガラスケージサイズの見直し
さらに重要なのが、ガラスケージのサイズを見直すことです。
最初から単独飼育用に用意されたガラスケージでは、スペースが足りず、お互いに逃げ場がなくなってストレスが増してしまう可能性があります。
新しく個体を追加する場合は、複数匹でも十分に距離が取れる広さがあるかどうかを確認し、必要に応じてワンサイズ上のガラスケージに変更するなどの工夫が必要です。
ならし期間を設ける
このような事態を防ぐためには、いきなり同居させるのではなく、段階的な慣らし期間を設けることがポイントです。
たとえば、最初は透明な仕切りや別のケース越しにお互いの存在を確認させ、落ち着いた様子が見られたら短時間だけ同じ空間に入れて様子を見るといった工夫が効果的です。
トリートメント期間を設ける
また、新入り個体が病気や寄生虫を持ち込むリスクもあるため、導入前には数日間の隔離期間(いわゆるトリートメント)を設けて健康状態を観察するのが理想です。
急に環境が変わるとどちらの個体にもストレスがかかるため、慎重かつ段階的に慣らしていくことが成功のカギとなります。
多頭飼いに潜むリスクと注意点
イエアメガエルは一見おっとりした性格に見えますが、多頭飼いとなるとさまざまなリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。
見た目の可愛さに油断していると、取り返しのつかないトラブルに繋がることもあります。
共食いリスク
まず最も注意すべきは、何度もお伝えしていますがやはり共食いのリスクです。
イエアメガエルは動くものに対して反射的に食いつく性質があるため、相手が同じカエルでも口に入るサイズであれば飲み込もうとしてしまうことがあります。
とくに体格差がある場合や、エサ不足の状態では危険が高まります。
餌の取り合い
次に、エサの取り合いによるストレスです。
同じタイミングで給餌しても、すばやく動く個体が独占してしまい、遅い個体は満足に食べられないというケースがよくあります。
これが続くと、栄養状態に差が出たり、体調を崩す原因にもなります。
脱皮中の干渉
また、脱皮中の個体への干渉にも注意が必要です。
イエアメガエルは定期的に皮膚を脱ぎ、それを自分で食べるという行動をします。
この最中にほかの個体が干渉すると、うまく脱皮できずに皮膚が体に残ることがあります。
つまりイエアメガエルが「脱皮不全」を引き起こす可能性があるのです。

環境悪化スピードが高まる
さらには、水質悪化やケージ内の糞尿による環境悪化のスピードが早まるという現実的な問題もあります。
単独飼育に比べて排泄物の量が増えるため、水や床材が汚れるスピードも速くなり、こまめな掃除や水換えが不可欠になります。
数が増えるほどリスク高
そして意外と見落とされがちなのが、飼育数が増えるほどリスクも飼育難易度も右肩上がりになるという点です。
「単体よりも2匹」「2匹よりも3匹」「3匹よりも4匹…」といったように、同一ガラスケージ内の個体数が増えるほどトラブルの可能性は跳ね上がります。
エサの取り合いや力関係の変化も複雑化し、飼い主が管理すべきポイントも増えるため、初心者にはかなりの負担になることも。
そのため、多頭飼いを初めて試す場合はまずは2匹からスタートし、個体ごとの性格や相性、飼育管理の流れをじっくり把握することをおすすめします。
どうしても同居が難しいときの代替案
イエアメガエルの多頭飼いは魅力的ではありますが、どうしても性格が合わなかったり、トラブルが続いたりする場合は無理に同居を続けない方が賢明です。
個体の安全と健康を第一に考えるなら、いくつかの代替案を検討するのが良いでしょう。
ガラスケージ内をアクリル板で仕切る

まず最も手軽なのは、仕切りを設置して同じガラスケージ内で空間を分ける方法です。
アクリル板や爬虫類・両生類用の仕切りパネルを使えば、お互いの姿をうっすら確認できる距離感を保ちつつ、直接的な接触は避けることができます。温度や湿度の管理を共有できるのもメリットです。
並行飼育

次に、ガラスケージそのものを別々にする「並行飼育」。
これはコストやスペースに余裕がある場合におすすめで、完全に別々の空間にすることで、共食いやケンカのリスクはゼロになります。レイアウトや環境を個体ごとに最適化できるのも利点です。
監視できる時間帯のみ同じケージに入れる
また、どうしても一緒に飼いたい場合でも、日中は別々に管理しつつ、監視できる時間帯だけ同じガラスケージに入れる「時間交代制」という方法もあります。
これはやや上級者向けで管理の手間が増えますが、カエル同士のストレスを軽減しつつ、飼い主としての観察も楽しめる工夫です。
まとめ:多頭飼いは工夫次第で楽しくなる!
イエアメガエルの多頭飼いは、うまくいけば個体同士のやり取りや行動の違いを観察できる、とても奥深い飼育スタイルです。
ただし、そのぶんリスクやトラブルも増えるため、単独飼育よりも慎重な判断とこまめな観察、そして柔軟な対応力が求められます。
とくに初心者の方は、「まずは2匹から」という控えめなスタートがベストです。
飼育数を増やせば増やすほど管理も複雑になり、見落としがちな小さな異変にも気づきにくくなってしまいます。
大切なのは「何匹飼うか」ではなく、「どの子も健康に、ストレスなく過ごせる環境を整えられるか」という視点です。
多頭飼いは決して無理にやるものではありません。相性や飼育環境をしっかり見極めたうえで、慎重に挑戦していくようにしましょう。