「グゥグゥ…」「グォグォ…」と響く、不思議な鳴き声。
その声の主がヒキガエルだと気づいたとき、あなたはどんな立場にいますか?
「ペットとして飼っているけど、夜中にうるさくて眠れない…」
「近所の川で毎晩鳴いていて騒音みたい…」
――どちらのケースも、意外とよくある悩みです。
この記事では、ヒキガエルの鳴き声の特徴や鳴く理由をわかりやすく解説しつつ、飼育者向け・非飼育者向けに分けて対策方法や付き合い方もご紹介します。
「うるさい」と感じる前に、まずはその“声の意味”を知ってみませんか?
ヒキガエルの飼育全般に関する詳細は以下の記事を是非参考にしてください。
ヒキガエルの鳴き声とは?

鳴き声の特徴と音の例
ヒキガエルの鳴き声は「グゥグゥ…」「グォグォ…」といった低くこもった音が特徴です。
まるでウシガエルの声をやや控えめにしたような、重たい響きのある音で、夜の静けさの中で聞こえると特に目立ちます。
単発ではなく「グゥ…グゥ…グゥッ」と連続的に鳴くことが多く、音のリズムは不規則で少し不気味に感じることもあるでしょう。
鳴き声のボリュームは個体差がありますが、特に繁殖期には複数のオスが一斉に鳴き交わすため、周囲に響きわたることも珍しくありません。
アマガエルなど他のカエルとの違い
アマガエルが「ケロケロ」という高く軽やかな声で鳴くのに対し、ヒキガエルの声は低音かつ濁りのある音質。
そのため、アマガエルの声が「かわいらしいBGM」だとすれば、ヒキガエルの声は「どこか怪しげなSE(効果音)」のような印象を受けることもあります。
また、アマガエルは繁殖期以外でも鳴くことがありますが、ヒキガエルは繁殖期(春)以外はほとんど鳴きません。
この“季節限定ボイス”も、他のカエルとの大きな違いといえるでしょう。
なぜヒキガエルは鳴くのか?

繁殖期のオスがメスを呼ぶため
ヒキガエルが最もよく鳴くのは、春の繁殖期。
この時期、オスたちは水辺に集まり、鳴き声でメスを呼び寄せようと必死にアピールします。
この鳴き声は「繁殖音」と呼ばれ、オスにしか出せない特別な声です。
メスに自分の存在を知らせるだけでなく、周囲のオスとの競争に勝つためにも、より大きく、持続的に鳴くことが重要になります。
オス同士のリリースコール
繁殖期の水場では、オスが密集するため誤って他のオスに抱きつくことも珍しくありません。
そんなとき、「ちがうよ!オスだよ!」と知らせるために、「グッ」「ギュッ」といった短い鳴き声を出します。
これは「リリースコール」と呼ばれ、しがみつきを解くためのサインです。
戦いというより、ちょっとした「間違い防止のコミュニケーション」ですね。
メスは驚いたときに短く鳴くことがある
基本的に、鳴き声を発するのはオスだけですが、メスもまったく声を出さないわけではありません。
例えば、人に持ち上げられたり、急に驚かされたときなどに、「キュッ」や「グッ」といった短くかすれた声を出すことがあります。
これは鳴嚢(鳴き袋)を使った本格的な鳴き声ではなく、防御反応や驚きによる反射的な声と考えられています。
つまり、鳴くことがあるとはいえ、習慣的に鳴くわけではないというのがポイントです。
ヒキガエルの鳴き声が気になるときの対策方法【立場別】
あなたがヒキガエルを飼育している場合

鳴くタイミングはいつ?
飼育下でも、ヒキガエルのオスは春先の繁殖シーズンになると鳴き始めます。
特に室内が暖かく、春の気配を感じさせる環境になると、日照や温度の変化に反応して発情スイッチが入ることがあります。
「夜になると急に鳴き始める」「他の個体にしがみついて鳴いている」といった行動が見られるなら、それは本能的な求愛行動です。
ご近所への音漏れが気になるときは?
室内で鳴いているとはいえ、夜間に低音が響くと壁を通じて音漏れすることも。
特にアパートやマンションなどの集合住宅では、ご近所への配慮が気になるポイントですよね。
対策としては、飼育ケースを厚手の布や段ボールで覆う(通気性確保しつつ)ことで音を少し軽減できる場合があります。
また、繁殖期のあいだは寝室から離れた場所にケージを移すなど、音の届きにくいレイアウトに変更するのも有効です。
鳴き止ませる方法はあるのか?
正直に言うと、完全に鳴き止ませる方法はありません。
鳴くのは自然な生理現象であり、無理に止めようとするとストレスや健康悪化の原因になるおそれもあります。
どうしても気になる場合は、オスだけを別の部屋に移す・一時的に離すなどの工夫で少し静かにできることも。
ただし、鳴くのは繁殖期の限られた期間だけなので、季節的なものと割り切るのが現実的な対処法ともいえるでしょう。
あなたがヒキガエルを飼っていない場合

どこから鳴き声がしているのか特定する
もし「どこからともなくグゥグゥと鳴いていて気になる…」という場合は、まず声の発生源を探すことが第一歩です。
ヒキガエルは雑木林のふち・庭の片隅・用水路沿いなどに潜んで鳴くことが多く、鳴き声だけでは場所が特定しにくいこともあります。
夜間にライトを持って、声のする方向をゆっくり探すと、静かにたたずんでいるヒキガエルの姿が見つかることも。
住宅に入らないようにする対策
ヒキガエルは高く跳ぶことが少ないため、20〜30cmの障壁でも侵入防止に役立ちます。
家の周りにある隙間や穴をふさぐ・水たまりを減らす・雑草を刈るなどの環境整備も、カエルの居場所を減らすポイントです。
ただし、**捕まえて遠くに放すことは法律で禁止されている(鳥獣保護法)**ため、基本は「来づらくする」対処を心がけましょう。
どうしても気になる場合の対応(耳栓、自治体相談など)
繁殖期の一時的な鳴き声とはいえ、騒音として眠れないほど気になるケースもあります。
その場合は、耳栓や窓の防音対策を行うのが現実的な対応です。
また、自治体の環境相談窓口に相談することで、保護とのバランスを考慮しつつアドバイスをもらえることもあります。
とはいえ、自然の生き物の営みでもあるため、可能であれば「春だけの風物詩」として見守る気持ちも持てると理想的ですね。
ヒキガエルの鳴き声が聞こえる季節と時間帯
繁殖期はいつ?
ヒキガエルが鳴くのは主に春の繁殖シーズンで、地域にもよりますがおおむね2月下旬~4月頃にかけてがピークになります。
暖かくなってくるとともに、オスたちは産卵のために水辺へと集まり、集団で鳴き交わすようになります。
特に雨が降ったあとの夜などは活発に活動しやすく、一斉に鳴き始める「カエル合唱団」状態になることも。
それ以外の季節には、基本的にほとんど鳴かないため、**鳴き声を聞けるのは年に一度の“春のイベント”**とも言えます。
夜に鳴くのはなぜ?
ヒキガエルは夜行性の生き物です。
日が落ちてあたりが暗くなると活動を始め、繁殖期のオスは夜通し鳴き続けることもあります。
これは天敵に見つかりにくいという生態的な理由のほか、気温や湿度の条件が整いやすい夜間の方が、カエルたちにとって快適な活動時間であるためです。
そのため、ヒキガエルの鳴き声が気になる時間帯はだいたい夜8時〜深夜1時ごろが多く、静かな夜ほど響きやすいというわけです。
まとめ|ヒキガエルの鳴き声とうまく付き合うために
ヒキガエルの鳴き声は、春の繁殖シーズン限定の自然現象。
「グゥグゥ…」という不思議な音は、オスたちがメスを呼ぶための大切なサインです。
飼育している場合には、ご近所トラブルを避けるための音対策や飼育場所の工夫が必要になることもあります。
一方、野外で鳴き声が気になるときは、できる範囲での環境整備や距離の取り方を意識することで、無理なく共存できる可能性もあります。
鳴き声が響くのは、ほんの一時。
少しだけ見方を変えてみれば、それは「春の訪れを告げる声」かもしれません。
ヒキガエルの飼育全般に関する詳細は以下の記事を是非参考にしてください。