
日本の田んぼや公園などで見かけることの多い「ヒキガエル」は、正確には「ニホンヒキガエル」と呼ばれる在来種です。
本ページでは、ニホンヒキガエルの飼育に興味がある方に向けて、必要な設備・飼い方の基本・注意点などをわかりやすくまとめています。
自然に近い環境で、じっくりと育ててみたい方は、ぜひ参考にしてください。
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🐸ヒキガエルとは?特徴と飼育の魅力

ヒキガエル(ニホンヒキガエル)は、日本に広く分布する大型のカエルで、のそのそとした動きとどっしりした体格が特徴です。
背中にはブツブツとしたイボ状の皮膚を持ち、威嚇時には耳腺から白い毒液(ブフォトキシン)を出すことでも知られています。
成体の体長は10cm〜15cmほどと大きく、見た目はややいかつい印象ですが、性格はおとなしく飼いやすい個体が多いのが魅力です。
動きも緩やかで、観察しやすいため初心者にも人気があります。
ヒキガエルは夜行性で、昼間はじっと隠れ家に潜み、夜になると活発に動きます。
人工的な環境にも適応しやすく、湿度や温度の管理をしっかり行えば、比較的長く飼育することができます。
ペットとしての派手さはないものの、素朴な存在感と観察の面白さは他のカエルにはない魅力。
その生態をじっくり観察しながら育てる楽しみが、ヒキガエル飼育の醍醐味です。
🏠飼育に必要な環境と設備
ヒキガエルは丈夫なカエルとして知られており、最低限の設備でも飼育が可能です。
ただし、長期間にわたって健康に飼うには、自然に近い環境を意識したケージ設計が大切です。
🧱ケージの大きさと材質
体の大きさに対してあまり活発には動かないため、60cmクラスの水槽や衣装ケースでも飼育可能です。
ただし、成体になるとかなりの体格になるため、小型ケージでは窮屈になりがちです。
奥行きのあるケースを選ぶと落ち着いて過ごせます。
フタは必須ですが、ヒキガエルはそれほどジャンプ力がないため、重し付きの金網フタや簡易な蓋でOKです。
通気性を確保しつつ、逃走を防げる構造を選びましょう。
🌱床材の選び方
ヒキガエルは土に潜ったり、身体を沈めてじっとすることが多いため、湿度を保持できる柔らかめの床材が適しています。
具体的には以下のような素材が選ばれています:
- 赤玉土(細粒)
- ヤシガラ土
- 腐葉土(無農薬・無添加)
- ピートモス(単体ではやや酸性が強いため、混合利用推奨)
特に赤玉土+ヤシガラのミックスは吸湿性と通気性のバランスが良く、多くの飼育者に支持されています。
ヒキガエル飼育における床材の選び方や扱い方については以下の個別記事にて詳しく解説しています。

🌡温度と湿度の管理
ヒキガエルはある程度の温度変化に耐性がありますが、20〜26℃程度の安定した気温を保つのが理想です。
冬場はパネルヒーターやエアコンで保温対策を行いましょう。
湿度は60〜80%を目安に。乾燥しすぎると脱皮不全や体調不良の原因になります。
床材を適度に湿らせることと、定期的な霧吹きで湿度を調整します。
🍴ヒキガエルの餌と給餌の基本
ヒキガエルは完全な肉食性で、生きた動くものに強く反応します。
飼育下ではコオロギやミミズを中心に与えることが一般的で、給餌のタイミングや餌の種類に気を配ることで、健康な体を維持できます。
🐛主な餌の種類
- コオロギ(フタホシ・ヨーロッパ)
成長段階に合わせてサイズを選べば、最も手軽に入手できる定番の餌です。 - ミミズ(ドバミミズなど)
食いつきが非常に良く、ヒキガエルの主食として最適です。土付きで売られている場合は軽く水洗いしてから与えましょう。 - デュビア・レッドローチなどの昆虫
やや高栄養で、肥満の原因になることもあるので頻度には注意が必要です。 - ワラジムシ・ダンゴムシ・野外採集の虫類
自然な栄養源となりますが、農薬や寄生虫のリスクがあるため、自己採集には注意が必要です。 - 人工飼料(両生類用フード)
個体によってはまったく食べないこともあります。どうしても人工餌に慣れさせたい場合は、ミミズなどに染み込ませて与えるなど工夫が必要です。
⏱給餌の頻度と量
- 幼体〜若齢個体:2〜3日に1回。活発に動くため、餌の消費も早いです。
- 成体:週1〜2回。あまり運動しないので、与えすぎによる肥満に注意しましょう。
1回あたりの量は、頭の幅に収まるサイズの餌を2〜3匹程度が目安です。
また、月に1〜2回程度は絶食日を設けることで、消化器官を休ませる効果もあります。
ヒキガエルの餌やりについては以下の記事にて詳しく解説しています。

⚠️飼育中によくあるトラブルと豆知識
ヒキガエルは比較的丈夫なカエルとして知られていますが、環境や給餌のミス、管理不足が原因で起こるトラブルも存在します。
ここでは飼育中によくある問題と、起こさないための対策を紹介します。
💧脱皮不全
ヒキガエルも定期的に脱皮を行います。
健康であれば自分で皮を剥がし、それを食べて処理しますが、乾燥や不衛生な環境では皮が一部残ったままになり、脱皮不全を引き起こすことがあります。
ヒキガエルの脱皮不全については以下の記事で詳しく解説していますので是非参考にしてください。

⚠️誤飲や床材の食べ込み
餌と一緒に床材(特に赤玉土やピート)を飲み込んでしまうことがあります。
少量なら排出されますが、大量に食べ込むと腸閉塞などのリスクがあります。
→ 対策:餌やりの際はペットシーツを敷く、ピンセット給餌を活用するなどの工夫を。
🧍逃走・脱走事故
ヒキガエルはジャンプ力は高くないものの、意外と力が強く、フタの隙間から押し出して逃げるケースもあります。
また、夜行性なので気づかないうちに移動していることも。
→ 対策:フタはしっかり固定し、重しやロック機構を使用する。
ヒキガエルの脱走については以下の記事で詳しく解説していますので是非参考にしてください。

🐾ストレス・過度なハンドリング

手で触られることを嫌がる個体も多く、過度なハンドリングはストレスになりがちです。
また、皮膚から毒を分泌するため、素手での扱いは人間側にもリスクがあります。
→ 対策:観察は見て楽しむスタイルにし、掃除や移動時のみ慎重に対応しましょう。
☠️毒性について

ニホンヒキガエルは背中の後方、目の後ろあたりにある「耳腺(じせん)」から白い乳液状の毒液(ブフォトキシン)を分泌することがあります。
このヒキガエルの毒は、外敵に対する防御手段であり、人間にとっても注意が必要です。
触った程度で症状が出ることはまれですが、皮膚の弱い人や粘膜(目・口・鼻)に触れると炎症や中毒症状を起こすことがあります。
そのため、ヒキガエルを素手で触ったあとは必ず手を洗うようにし、目や口を触らないように注意してください。
また、犬や猫などのペットがヒキガエルを咥えると、中毒を起こす危険性があるため、小動物や子どもとの同居環境では細心の注意が必要です。
飼育下では頻繁に毒を出すことはありませんが、驚かせたり無理に触れたりすると分泌することがあるため、なるべく静かに接するよう心がけましょう。

🧍♂️🧍♂️多頭飼いについて
ヒキガエルは基本的に単独飼育が推奨される生き物です。
野生では単独で生活しており、繁殖期以外に群れで過ごすことはありません。
そのため、複数匹を同じケージで飼うとストレスやトラブルの原因になることがあります。
特に以下のような点に注意が必要です:
- 体格差があると危険
大きな個体が小さな個体を誤って餌と認識してしまい、共食いに発展するリスクがあります。 - 隠れ場所が少ないと争いのもとに
ヒキガエルは基本的にじっとしている時間が長いですが、同じ場所を奪い合うような環境だとストレスやケンカの原因になります。 - 糞尿や湿度の管理が難しくなる
複数匹になると汚れも増え、掃除や湿度管理の手間も倍増します。
どうしても多頭飼いをしたい場合は、
- 同じくらいの大きさの個体を選ぶ
- 広めのケージ(90cm以上)を用意する
- 隠れ家や床材を十分に配置する など、物理的にも心理的にも距離をとれる設計を心がけましょう。
🍴共食いについて
ヒキガエルはサイズの違う個体を同じケージで飼育すると、共食いが起きる可能性があります。
これは性格が荒いからではなく、ヒキガエルの「動くもの=餌」と認識する習性によるものです。
特に以下の状況は危険です。
- 空腹時に小さな個体が目の前を動いたとき
- 暗い環境下で判断力が鈍っているとき
- 給餌のタイミングを逃して長時間エサをもらっていないとき
大きな個体が小さな個体を丸呑みにしようとして、喉に詰まらせて両方が死んでしまうケースもあります。
このような事故は想像以上に多く、油断すると一晩で起きてしまうこともあります。
ヒキガエルの瞳孔がハート型に見える?
ヒキガエルの目をよく観察すると、瞳孔の形がハート型に見えることがあります。
すべての個体で明確にハートに見えるわけではありませんが、光の当たり方や見る角度によって、独特なハート形の輪郭が浮かび上がることがあります。
この特徴は他のカエルには見られず、ヒキガエルならではの魅力のひとつです。

ヒキガエルの仲間
この記事ではヒキガエル=ニホンヒキガエルという定義で話を進めていましたが、実はそれ以外にも日本国内や海外にはいくつかの仲間が存在します。
ここでは、ニホンヒキガエルと同じ「ヒキガエル属」に分類される代表的な種を紹介します。
🐸 ミヤコヒキガエル

ミヤコヒキガエルは沖縄本島を中心に生息する、日本固有のヒキガエルの一種。
見た目や生態はニホンヒキガエルと似ていますが、島特有の環境に適応しており、鳴き声や体の模様などに違いも見られます。

🐸 ナガレヒキガエル

ナガレヒキガエルは、四国地方の河川周辺を中心に生息する、日本の在来種。
ややスリムな体つきと活発な性格が特徴で、同じニホンヒキガエルの亜種ながらも異なる魅力を持っています。

🐸 エジプトミドリヒキガエル

エジプトミドリヒキガエルは鮮やかな緑色の体が特徴のエキゾチックなヒキガエルで、アフリカや中東地域に分布しています。
日本では外来種としてペット流通もしており、ユニークな見た目が人気です。

🎁ヒキガエル飼育の魅力とまとめ
ヒキガエルは派手さのない見た目とは裏腹に、とても味わい深い魅力を持ったカエルです。
おっとりとした動きやユーモラスな顔つき、意外にもしっかりとした観察のしがい。長く付き合えば付き合うほど、その魅力はじわじわと感じられるようになります。
飼育環境をしっかり整え、無理のないペースで接していけば、丈夫で長生きする頼もしいパートナーとなってくれるでしょう。
この記事が、ヒキガエルの飼育に挑戦してみたい方にとっての一歩になれば幸いです。
ぜひあなたも、自分だけの“ヒキガエルとの暮らし”を楽しんでみてくださいね。