ベルツノガエルは、その愛らしい見た目とは裏腹に、共食いをすることで知られるカエルです。
とくに複数飼育をしていると、ある日突然、一匹が姿を消していた……なんてことも珍しくありません。
なぜ共食いが起こるのか?どうすれば防げるのか?
この記事では、ベルツノガエルの共食いの原因と防止策について、初心者にもわかりやすく解説していきます。
なお、ベルツノガエルの飼育全般を知りたい方は以下の記事が参考になるのでご参照ください。
ベルツノガエルの共食いは本当にあるの?

実際に報告されている共食いの事例
ベルツノガエルの共食いは、都市伝説ではなく実際に起こり得るトラブルです。
飼育者の中には、「朝見たら1匹しかいなかった」「口から足が出ていた」など、衝撃的な状況を目撃した人もいます。
とくに多頭飼育をしているケースでは、1匹がもう1匹をエサと認識して丸呑みしてしまうという事故が発生しています。
驚くべきことに、共食いされた側は同じ種であるにもかかわらず、何のためらいもなく捕食対象になってしまうのです。
共食いは珍しいケースではなく、飼育環境や個体の性質によっては高確率で起きる可能性があります。
可愛さとギャップ!肉食性の本能について
ふっくらした丸いフォルムと大きな目が魅力のベルツノガエル。しかしその見た目とは裏腹に、実は非常に獰猛な肉食動物です。
自然界では昆虫や小動物、さらには小型のカエルなどを狩って食べることもあり、動くもの=エサという認識が強く根付いています。
この「動くものはなんでも食べる」という本能が、同居個体との間で悲劇を生むことになります。
たとえ仲間であっても、体格差があったり、空腹だったりすると目の前の相手を容赦なく襲ってしまうことがあるのです。
食べた側にもリスクがあるって本当?
共食いは、食べられた側にとっては当然命に関わる大事件ですが、実は食べた側のカエルにも深刻なリスクがあります。
同種のカエルは骨格や皮膚が硬く、大きさもあるため、うまく消化できずに体調を崩したり、最悪の場合は吐き戻しや腸閉塞を起こしてしまうこともあるのです。
ベルツノガエルは丸呑みが基本の捕食スタイルなので、サイズや形状が適さない獲物を飲み込むと、内臓への負担が大きくなることは避けられません。
つまり、共食いは両者にとってハイリスクな行動ということになります。
なぜ共食いが起きるのか?原因を解説

食欲旺盛すぎる性質
ベルツノガエルはとても食欲が旺盛な生き物です。
自然界ではいつエサにありつけるかわからないため、「食べられる時に食べる」という習性が強く備わっています。
ベルツノガエルには「満腹だから食べない」といった感覚がほとんどなく、目の前で動くものがあれば、本能的に反射的に飛びかかってしまうことが多いのです。
同居している個体が動いた瞬間、それをエサと勘違いして丸呑みしようとする──。
これが共食いの典型的なパターンです。
動くものは何でもエサと誤認する習性
ベルツノガエルの狩りは、視覚に大きく頼っています。動くものを目で捉えて、そこに飛びつくという反射的な行動が中心です。
つまり、動いてさえいれば「それが何か」を深く考えずに食いついてしまうということです。
この反応は、小さな虫に対しても、大きさの違う同種のカエルに対しても変わりません。
そのため、飼育者が意図せず近くに置いた同居個体を、完全に“エサ認定”してしまうのです。
では正しくは、ベルツノガエルに餌をどのように与えればいいのかについては以下の記事が参考になりますのでご参照ください。

サイズ差による力関係
共食いは特にサイズ差のある個体を一緒に飼育した場合に起こりやすいです。
大きい方が小さい方を丸呑みしようとする傾向が強く、逆に同じくらいの大きさであれば、にらみ合いで終わることもあります。
とくに成長スピードに差が出やすい若齢期では、ある日突然、サイズ差が開いてしまい、共食いのリスクが急上昇することがあります。
日々の観察が欠かせません。
ストレスやテリトリーの問題も
ベルツノガエルは基本的に単独行動を好む生き物です。
他の個体が近くにいるだけでストレスを感じ、攻撃的になることもあります。
また、狭いスペースではお互いのテリトリーが侵されやすく、その結果として争い=共食いに発展することもあるのです。
狭いケージでの同居は、心理的な圧迫感も強く、攻撃行動を誘発する要因になり得ます。
共食いを防ぐには?飼育者ができる対策

基本は単独飼育が安心
ベルツノガエルを飼育するうえで、最も確実な共食い対策は“単独飼育”です。
とくに個体同士にサイズ差がある場合は、同居は極めて危険です。
同種であっても、見た目や動きで判断するような生き物にとって、仲間意識のような感覚はほぼ期待できません。
1匹ずつ別の容器で管理することで、誤認による攻撃やストレス、捕食事故を根本から防ぐことができます。
ベルツノガエルは単独でも全く寂しがらないので、安心してください。
どうしても多頭飼育したい場合の注意点
それでも「スペースの都合」「どうしても一緒に飼いたい」といった事情がある場合は、徹底したリスク管理が必要です。
例えば、個体のサイズがほぼ同じであること、十分な広さを確保できること、視覚的に相手が見えにくいように仕切りやシェルターを設置することが重要です。
とはいえ、多頭飼育はいつ何が起きるかわからない“事故待ち”状態でもあるため、推奨はできません。
あくまで「どうしても」という場合の最終手段として考えましょう。
給餌時のトラブルを防ぐコツ
共食いは給餌中に発生するケースも多くあります。
特にピンセットでの給餌や生きたエサを与える時は注意が必要です。
1匹が動いた瞬間にもう1匹が飛びかかり、誤って噛みついてしまうことがあるため、給餌は個別に行うのがベストです。
もし複数個体を同じケージで一時的に飼う場合でも、エサを与えるタイミングでは完全に分けることを徹底してください。
カエルに「これは仲間だよ」と教えることはできません。
エサを見れば本能で動く、それがベルツノガエルです。
共食いが起きた場合の対処法

途中で気づいた場合の分離と応急処置
もし共食いが進行中の現場を目撃してしまった場合、まずは落ち着いて2匹を引き離すことが大切です。
ただし、すでに口にくわえている場合は、無理に引き剥がそうとすると両者ともにダメージを負う可能性があるため慎重に対応しましょう。
口を開かせるには、ぬるま湯をゆっくりかけたり、ピンセットで優しく口の横を押したりといった方法があります。
力任せな行動は絶対にNGです。
丸呑みしてしまった時のリスクと判断基準

もしすでに1匹が丸呑みされてしまった場合、飼い主ができることは非常に限られます。
様子を見るしかない場合も多く、無理に吐かせようとすると、逆に命を落とす危険性が高まります。
食べた個体がぐったりしている、異常な膨張が見られる、排泄が止まるなどの症状があれば、爬虫類・両生類を診られる獣医に早急に相談しましょう。
誤飲による窒息・消化不良の注意点
共食いは「食べる=栄養になる」とは限りません。
大きすぎる獲物は消化不良や腸閉塞を引き起こす可能性があり、食べた側の命をも脅かします。
さらに飲み込む際に気管が圧迫されれば、窒息のリスクもゼロではありません。
つまり、共食いは一方的な犠牲ではなく、両者が命の危険にさらされるハイリスクな事態なのです。
まとめ|ベルツノガエルの共食いは「防げる事故」
ベルツノガエルの共食いは、決して珍しい話ではなく、飼育者のちょっとした油断から簡単に起こってしまう事故です。
その背景には、満腹中枢がないことによる暴食本能や、動くもの=エサという強い反射的行動が関係しています。
そして忘れてはいけないのが、共食いは「食べられた側」だけでなく、「食べた側」にも命の危険があるという点。
見た目が可愛いからと油断してしまうと、取り返しのつかない事態になりかねません。
ベルツノガエルを安全に飼うためには、単独飼育を基本とし、絶対に油断しないこと。
それがカエルにも飼い主にも、いちばんやさしい選択なのです。
引き続き、ベルツノガエルの飼育全般を知りたい方は以下の記事が参考になるのでご参照ください。